仕返しと遭遇8 (8/11)




 
 
 
ちくしょう、時間さえ気にしていればバレなかった!もう!あたしのバカっ!!



思いのほか時間が経過していたようで、丁度昼休みになっていたらしい。



確かに何回か、カーンッていう音が聞こえてた気がする。不覚っ!!



丁度ドイ先生が、お昼ご飯を持って来てくれたのでバレたのだ。



部屋に着いてお昼ご飯を差し出された。おーっ!これオムライスだ!おいしそー!



『あ、ドイ先生!お昼ご飯一緒に食べよー』

「……すいません。この後やる事がありますので」



ドイ先生は一瞬困ったような顔をして、いつもの作ったような笑顔になった。



『そっか、じゃあ一人でいいや』



別に寂しくなんかない。昔に戻ったと思えばいいんだ。



『あ、これ朝のご飯のお皿だよ!すごくおいしかったよ!ありがとー!』

「それは、良かったです。料理人に伝えておきますね」



ドイ先生は、昼休みの終わり頃に食器を取りに来ると言い残し、そのまま去って行った。






うん、寂しくなんかない。






だから今だけ忘れよう、






ジェームズ達と騒ぎながら食べたご飯、ギントキ達との節約無視のご飯戦争、ルフィ達と肉の取り合いをしながら食べたご飯。



楽しかった食事の思い出は、今のあたしにはちょっと辛いや。



おいしいはずのオムライスが、ほんの少し味気なく感じた。









* * *









 
また脱走していた!



全く、よくもまあ予想通りの事をしてくれるものだ。



土井は、空になった朝餉の盆を持って食堂へ向かっていた。



昼餉を下げにいく時はいるだろうが、午後は私も授業だ。



あの自称魔女の天女は、絶対また部屋を出るに違いない。休み時間に見に来ると言っておけば、無闇にウロチョロしないかもしれない。よし、その作戦でいこう。



「…………」



土井が、ふと視界に入った空の皿を見つめた。






一緒に、食べよう、か。






一瞬、頷きそうになった。



天女の可能性が大きい彼女に、私は気でも許してしまっているのだろうか。



そんな事を考えていると、いつの間にか食堂に着いていた。



カウンターでは、四人目の天女が猫なで声で忍たま達に配膳している。いや、見方によったら配膳しているが、ほとんど喋っているだけだ。



私は裏へと回り、食堂のおばちゃんに空の食器を渡した。



「わざわざごめんなさいね土井先生。先生も色々大変でしょうに」

「いえ、これも生徒達の為です」



そうだ、生徒の、忍たま達の為だ。気など抜く余裕はない。



「土井先生、これ貰ってちょうだい?ここでゆっくり食べる時間もないんでしょう?」



四人目の天女に気付かれないように気を配りながら、おにぎりが二個入った包みを渡される。



「……おばちゃん、ありがとうございます」

「気にしないでちょうだい。またゆっくり食堂で食べに来て下さいね」

「はい、必ず」



食堂を後にした私は、自室に戻る。山田先生はすでに戻っておられた。



「すいません遅くなりました」

「大丈夫ですよ土井先生」



現在、中途半端に稼働している委員会や、任せられない任務の処理で教員達が走り回っている。



授業単位の一角である実技的な任務も、天女の妖術で鍛錬不足となっている忍たま達には任せられない。正気を保てている忍たまの数でさえ、詳しくは把握出来ていないのだ。


 
「山田先生、食堂のおばちゃんからおにぎりを頂いたので分けましょう」

「おお、それは有り難い」



一段落ついた辺りで、山田先生と先ほど貰ったおにぎりを頬張る。



うまい。



けれど、食堂のおばちゃんの作りたてのご飯が食べたい。



そういえば、自称魔女の天女は温かいうちに食べれたのだろうか。



今回の脱走はわりかし早く見つける事が出来たので、食堂のおばちゃんの料理も冷めてはいないはずだ。



「……………」



今頃、一人で食べているのか。



少しだけ、胸が締め付けられた。



それを誤魔化すように、残りのおにぎりを口に放り込んだ。



ああ、もうすぐ昼休み終了の鐘が鳴る。自称魔女の天女の昼餉の食器を下げに行かなければ。



また、脱走されるだろうな。



 







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