仕返しと遭遇3 (3/11)
井戸と死闘を繰り広げたあたしは、ドイ先生に連れられて部屋へと戻る。朝ご飯を持って来てくれるらしい。なんか、ホントに屋敷しもべみたいで申し訳ないな。
「天女様、失礼します」
それにしても、何かこの天女とかいう呼び方定着してるじゃん。魔女だって言ってんのに。大体さー、天女って何?何する女の人の事なの?あと“ニョ”っていうの言いにくいよ。
ドイ先生が持ってきてくれた朝ご飯は、お米を丸めたオニギリとかいうやつと、ミソスープにシャキシャキした葉っぱ。良かったー、これならハシを使わなくても食べられそう。
『ドイ先生ありがとー!』
んーっ!日本のご飯って、ヘルシーで美味しいよね!かぼちゃジュースとかベーコンも美味しかったけど、和食もおいっしー!
「食器は置いておいて下さい。何かいる物があれば可能な限り持って来ますので、この部屋にいて下さい」
『はーい』
ま、もちろん出るけどね!
あたしは、ドイ先生が部屋から出たのを目で確認しながら、残りの朝食をもぐもぐと食べていく。
ぷはー、完食っ!ご馳走さまでしたっと。
あたしは日本風に手を合わせた。
さて、ドイ先生は授業って言ってたし、今日中に情報収集しときたいし……、
ヒナ探検隊出動っ!
あたしは一気に部屋から走り出た。何ていうか、この世界は空気がすごく澄んでて気持ちがいい。空を思いっ切り飛び回りたい気分だ。よし、ここを出たら人がいないところでいっぱい飛び回ろう!
「あれぇ〜?いつの間に入ったんですか?駄目ですよ入門表にサインせずに入っちゃあ〜」
『え、あ、ごめんなさーい』
しばらく散策していると、急に声を掛けられ少し驚いてしまった。そういえば、人避けの呪文してなかったや。もう、ヒナの慌てん坊さん!てへ。
「はい、入門表です」
走り寄ってきた彼は、ボードに挟んだ紙を見せてきた。
ううっ、あたし漢字読めない!
『ねぇねぇ、その“にゅーもんひょー”って何?』
あたしが彼の差し出したボードを指差しながら尋ねると、キョトンとした顔をされる。
「えぇ〜何って言われても、忍術学園の出入りを管理してる表だから、うーん、なんて説明すればいいのかなぁ〜」
『あ、もうわかったよありがとう!出入りを管理してるんでしょ?』
「それですそれ!はい、じゃあ早速サインお願いしますねぇ〜」
何か面白い人だ、この人。
ていうか、これアレだ。
“筆”ってやつだ。
ど、ど、どうしよう。
筆ってどうやって使うの?
それ以前にあたし、
日本語書けないっ!!
あ、いや待てよ、確か小さい頃に日本のおばあちゃんに“ひらがな”で名前の書き方だけ習ったような……。
くっ、仕方ない!
書いてやろうじゃないか!“ひらがな”ってヤツを!!
「…………」
『…………』
書けた、けど、さ?
予想以上に書きづらい筆に、うろ覚えの文字。うん、なんていうか、
「……えっと、字汚いですね」
『うううるさいよ!いいじゃん別に!書き慣れてないんだよ!』
もう!わざわざ言わなくてもいいじゃんか!わかってるよ字が汚い事くらいっ!
ヒナが羞恥心で顔が赤くなる傍ら、サインされた事で満足したのか「帰る時は出門表にサインお願いしますよぉ〜」と去って行く彼。
もうやだー、朝っぱらからとんだ恥をかいてしまった。
よし、とりあえず気を取り直して情報収集しよう。ここは学校だし、字の勉強だって出来るっしょ!あとでドイ先生に聞いてみよっと。
ふーんだ、見てなよさっきの忍者め。ひらがなだって、次はキレイに書けるようにしとくもんね!
ヒナは再び散策を開始した。
* * *
どうやら今は授業中みたいだ。多分だけど、さっきグランドみたいな所でドイ先生みたいな忍者と小さい忍者が何人かいたし。
あれってアレでしょ?ホグワーツでいう飛行訓練みたいなものでしょ?
情報収集どうしようかなと考えていると、見覚えのある忍者がスタスタと歩いていた。
あっ!あれキハチローだ!
ヒナは、近くにあった木にサッと隠れた。
そういえば、キハチローには落とし穴の仕返しをしていなかった。よし、こっそり後を付けて先回りしよう。
ヒナは、木に隠れながら綾部の後を追って行く。そして、綾部が通るであろう場所に先回りする。
木からチラリと顔を覗かせ、綾部の進行方向も確認する。杖もスタンバイして準備はバッチリだ。
しめしめ、キハチローはあたしに気付いていないし、このまま直進してくるはず。
見てなよキハチロー。
ふっふっふ、ホグワーツの悪戯小娘を敵に回したらからには、とびきりの悪戯を披露しようじゃない。
あたしはタイミングを見計らい、杖を軽く振った。
うん、落とし穴ならマグルっぽいよね!
キハチローも作ってるし!
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