仕返しと遭遇2 (2/11)




 
 
 
ドイ先生の叫び声で起きたあたしは、下ろしていた髪の毛をいつもの様に二つに結んだ。



どうやらドイ先生は、この時代の服を持ってきてくれたらしい。



『あ、またキモノってやつだ』



前々回にお世話になった“江戸”も、着物が主流の世界だった。あの時は溶け込む為にと着物で生活していたが、いざという時に着物は動きにくい。実際、そのせいで危ない目にもあった。



旅行しに来ている訳ではないし、やはり普段の慣れた格好の方が良い。



『という事で、遠慮します』

「……どういう事?」



ローブをずっと羽織っていれば制服も見えないし、ローブ姿なら色々言い訳出来るしオッケーでしょ。でも、折角のご厚意だったから、やんわりと拒否した。



何となく露出しなきゃいいって事は分かる。確かに、マクゴナガル先生にもスカートが短いって追い回されてたし。絶対ミニスカの方が可愛いのに。



『ねぇねぇドイ先生、洗顔とか歯磨きはどこでするの?』



顔を洗いたいと言えば、ドイ先生が“井戸”まで案内してくれた。



『??』



ナンダコレ。



あたしが首を傾げて悩んでいると、ドイ先生が“井戸”の使い方を教えてくれた。



すごいすごいっ!このロープを引っ張ると水が上がってくるんだ!やりたい!



あたしはドイ先生からやらなくていいと言われるが、やりたいもんはやりたい!さっきのドイ先生のやり方を見よう見真似でロープを引っ張る。



引っ張ったのだが、水が思いのほか重くて全く上がらない。



『うおっ!お、重っ!!何コレ重っ!!』



チクショウ!負けるかー!



おりゃあああああっ!!!









結局、ドイ先生が代わってくれました。てへ。









* * *









 
洗顔や歯磨きを済ませた自称魔女の天女を連れて、長屋へと戻る。



少し感心した事は、井戸の水汲みを自ら行おうとした事である。



重い重いと騒ぎながらも、私に頼らず水を汲み上げる姿は、幼い子どもが初めての水汲みを一生懸命頑張っているようにも見えた。



そのまま任せてどの位もつのかも見物だったが、余りにも遅いため強制的に代わった。



このままやらせていたら、四人目の天女と鉢合わせになりそうだ。



水を汲んで渡した時、へらへらっと笑いながら「ありがとー」と言われた。媚びていない感謝は久し振りだったからか、“ありがとう”という言葉に胸が少し温かくなった。




長屋に着き、自称魔女の天女に朝餉を持って来るので出歩かないようにと告げ、食堂へと向かった。



脱走したりしないだろうか、しかしこんな朝っぱらから出歩く事はないと思うが……



いたた、胃が痛い。



「………」



痛いけど、なんか爽やかな痛みだ。



「………………」



おいどうした私。爽やかな痛みってなんだ。痛みに爽やかもへったくれもないだろう。



少し頭が混乱しているもしれない。多分昨日の、きっとそうだ。



昨日の夜、自称魔女の天女を監視していたら、夜空へ向いて泣きながら笑っていた。何故か胸が締め付けられた。






もしかしたら、この子は、






ふと脳裏に過ぎったくだらない考えを頭の隅に追いやり、食堂への足を速めた。



 







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