魔女と天女の計画6 (6/7)
「おい三郎」
僕は羽衣さんに三郎の態度の悪さを謝った後、急いで出て行った本人を追い掛けた。
「………雷蔵」
振り返った三郎は、少し悲しげな表情をしていた。
一体何をどうすれば、そんな表情に行き着くのだろうか。
過去の天女様達に酷い目に合ったのは、僕も、三郎も、そしてみんなも同じ。
でも、羽衣さんは関係ない。
羽衣さんは他の天女様とは違う。
あの神様のような美しさ、あの天使のような可愛らしい性格、羽衣さんは正真正銘の天女様だ。
三郎は、羽衣さんをずっと警戒して冷たい態度ばかりとっている。
悲しいのは羽衣さんの方だ。
羽衣さんはみんなと仲良くなろうと頑張っているのに、三郎にはそれも分からないのか?
「………見損なったよ、鉢屋君」
「っ…!!」
いくら変装名人で天才って言われてても、羽衣さんの良さが分からないなんて、羽衣さんの素晴らしさが分からないなんて………
君は羽衣さんの何を見てるの?
「じゃあね、鉢屋君」
「ら……らい…ぞ……」
羽衣さんを嫌うのなら、僕はもう君の事は知らないよ。
ライバルも減るし、一石二鳥だ。
バイバイ、三郎。
* * *
“ 鉢屋君 ”
一瞬、息が止まった。
二人目の天女が来た時、私は偶然か必然か、正気に戻ることが出来た。
それからは三人目、あとは今回の天女が来た直後は少し惑わされそうになるが、正気を保つことが出来ている。
何とかしてみんなを正気に戻そうとしてみるが、異常なほど天女に執着していて何の進歩もない。
雷蔵は、きっと正気に戻る。
兵助も、八左ヱ門も、勘右衛門も、きっと前の様に戻る。
だって三人目の後の“暗黙の期間”の間で、前の私達に戻っていたじゃないか。
だから今回の天女の妖術が少し厄介なだけで、すぐ正気に戻るのだろう?
………そう信じたい、信じていたいのに、お前達はどんどん私から離れていく。
雷蔵………、みんな……、
私達の五年間は、あの得体の知れない天女に簡単に崩されてしまうのか?
雷蔵………、
もう私は、お前から三郎と呼んで貰えないのか?
鉢屋は、去って行く雷蔵の背中をじっと見つめていた。
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