魔女と天女の計画2 (2/7)
飽きた。
「ワタシなんか疲れちゃった、ちょっと休もっかなァー」
「長居してすみません羽衣さん!俺が側にいたかったばかりに………」
「それなら僕が話がしたいって誘ったから………」
元気なさげに座る羽衣に、五年い組の久々知兵助と、ろ組の不破雷蔵が慌てて謝る。
「ううん、いいのォー。ワタシもお話したかったから」
上目遣いで見上げる羽衣に、忍たまの四人は頬を赤く染める。
自室に戻って化粧を直していると、五年生の忍たま四人が訪問して来た。
唯一いないのは、鉢屋三郎だ。
五年生全員がワタシに夢中じゃないってのがムカつくゥー。
「あの、今日の夕餉は……」
「ごめんネェ、今日は受け渡しのお手伝いした後は仙蔵クン達と食べる約束してるのォー」
「そうですか………」
目に見えて落ち込む五年ろ組の竹谷八左ヱ門に、い組の尾浜勘ヱ門、羽衣は誘ってくれた二人に目を潤ませて謝る。
「本当にごめんねェ、明日また一緒に食べよォー?」
ぱぁっと笑顔になる五年生達。
明日の昼ご飯を一緒に食べる約束をして、五年生達は部屋を出て行く。
「…………」
あの四人、
ワタシが疲れてるって言ってるのに、何ですぐ出て行かないのォー?
ま、ワタシの事スキなのは分かるけどォ、空気読めなきゃダーリン候補には入れないわよ?
せっかく年も近いから、いいポジションなのにポイント上がんないじゃない。
それにしても、ワタシの事を奪い合うようにもっとホレさせないといけないけど……生け贄も必要よネ?
ワタシのコトを引き立ててくれて、ワタシのために悪者になってくれるもう一人のヒロイン。
嫉妬されてこそ、ワタシみたいなカワイくてキレイなヒロインが際立つの。
―――――ピッ
「!……いたァい」
丁度手を置いた場所に釘が突き出ており、指を切ってしまった。
「最悪ゥー………、あ!」
羽衣は血が出た指を見てニヤッと笑った。
「伊作クンとこ行こーッと」
羽衣は鏡で髪をチェックし、口にはグロスをたっぷり付け、香水を振り撒いて部屋を出て行った。
* * *
「伊作クンいるゥー?指切っちゃったのォ」
医務室の障子を開けて羽衣が中を覗くと、丁度伊作が薬を作っている所だった。
部屋に入った瞬間、葉っぱをすりつぶしたりした時の独特の臭さが鼻を刺激した。
チョー臭いんですけどォ。
もっと香水付ければよかった。
羽衣は伊作に近付き、切った指を見せる。
「血は出てますが、傷事態は浅いので大丈夫そうですね」
伊作はテキパキと処置を行い、包帯で指を巻いていく。
「ありがとォ。………伊作クンは優しいよネ、でも、みんなに優しいから妬いちゃうなァ」
羽衣は、包帯を巻くために至近距離にいる伊作を上目遣いで見つめた。
六年生の中で、伊作クンだけがワタシに遠慮している気がする。
多分、伊作クンは優しいから、みんなに遠慮してスキにならないようにしてるんだと思うの。
そんなの気にしなくてイイから、ワタシにさっさとホレてよネー。
あ、そういえば……
留三郎クンもあんまり会わないカモ。でも、目が合うとすぐ逸らすし、きっとシャイボーイなのネ!
ちょっとキツい顔してるけど、そういうギャップはカワイイじゃん!
「すみません天女様、怪我人は放って置けなくて……」
下を向く伊作。
「こっちこそごめんネ、でもそんな優しい伊作クンがスキだからいいの!」
伊作クンが顔をげてワタシと視線が合うと、ちょっぴり頬をピンクに染めながら微笑み返す。
「天女様………」
きっと伊作クンは、もうワタシしか考えられなくなる。
だって、さり気なく“スキ”って言ったんだもの。
再び下を向く伊作クン。
真っ赤になった顔をワタシに見られたくないのネ?
「変なコト言っちゃってごめんネ、キズの手当てありがとォ……」
ゆっくりと障子を閉めて医務室を出たワタシは、思わず口元が緩む。
これで伊作クンはワタシに落ちた。
あと、微妙なのは五年生の三郎クンと四年生の喜八郎クンかなァー。
喜八郎クンはチョーカワイイし、絶対ホレさせたい!
でも穴掘ってばっかりだから、なかなか会えないだよネ。
………てか、美しさを少し上げたり、逆ハーなんてなくても、みんなワタシに夢中になるのに。
だって、元の世界でもそうだったんだから。
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