魔女と天女の計画1 (1/7)
土井に捕まり、案内された長屋に連れ戻されたヒナ。
“正座”という座り方はあまり好きではないが、目の前にいる土井が正座しているので同じように正座した。
「天女様、前にも言いましたが、この部屋からあまり出ないで下さい。」
『……はーい』
勿論、出るけどね!
しかも天女じゃないっつーの!
見つかってしまった悔しさもあり、内心では舌をベーッと出している。
「もし出るのであれば、私に言ってからにして下さい。一週間ですけど、天女様のお世話をさせて頂きます」
あたしは思わずドイ先生を見たまま、口をポカンと開けて驚いた。
『えっ、そんな屋敷しもべみたいな事しなくていーよ!』
思いっ切り遠慮したら、今度はドイ先生の方が口をポカンと開けて首を傾げた。
「やしきしもべ?」
『あ、今のナシ』
いくら忍者っていっても、マグルには変わりない。それに異世界ジャンプの経験上、屋敷しもべは自分達の世界にしかいない可能性が高い。
つい出してしまった単語は取り消すことも出来ず、そういう仕事があると上手く誤魔化す。
あまり納得はしてなさそうな顔の土井だったが、話を変えるついでに、ここに来てからずっと気になった事を質問してみた。
『あのさドイ先生、なんでこの学校こんなにピリッとしてるの?』
「!?」
この質問に、土井は思わず目を見開いてヒナを見た。
『あ、でも、忍者の学校だから仕方ないかー』
「……………」
特に返事もない土井の方に振り向いて、視線を合わせた。
『……でも、学校は楽しくないとつまんないよ』
土井の表情が険しくなるのを見たヒナは、ここの学校も“訳あり”だと確信した。
自分がいるのは一週間。
出来るだけみんなの記憶に残らないように過ごさなきゃいけないけど、この部屋でじっとしているつもりはない。
ほんの少しでも良い。
あたしがいる一週間は、楽しく笑って学校生活を過ごして欲しい。
………と、いう訳で!
明日からは、いーっぱい悪戯しちゃうもんね!
ヒナは心の中で、しっかりと目標を立てて気合いを入れた。
* * *
やっと捕まえた自称魔女の天女を長屋に連れて戻った私は、彼女の発言に思わず目を見開いた。
この短時間の脱走の間に、この学園の雰囲気に気が付いたのか。
頭は馬鹿そうだが、洞察力は侮れない。
『……でも、学校は楽しくないとつまんないよ』
彼女は、そう言った。
こんな雰囲気になったのは、こんな今にも崩壊しそうな忍術学園になったのは………
あんたら天女のせいじゃないか。
何も知らない癖に、何も知らないからこそ綺麗に笑う彼女に苛々がこみ上げる。
今の私は、酷く険しい顔をしているだろう。
こんなに苛々したのも久しぶりかもしれない。どうもこの自称魔女の天女にはペースを乱されている。
「………とにかく、少し席を外しますので、何処へも行かずに待っていて下さい。というより出ないで下さい」
私は念を押し、脱走していた自称魔女の天女が見つかった事を学園長に報告するために部屋から出る。
「……………」
何となく、また脱走してそうな気がする。
いや、さすがにもうしないか……あんなにハッキリ出るなと言ったしな。
土井は閉めた障子をしばらく見つめ、学園長の庵へと向かった。
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