穴から始まる逃走劇6 (6/7)




 
 
 
ちょ、ヤバい。



マジでヤバいよこれ。



忍者足速っ!しつこっ!






何だ、このしつこさ。



そして、足の速さ。



何だかフィルチとの追いかけっこが可愛く思えてきた。



『ひーっ、場所的にあたし不利じゃん!』



曲がり角とか使いながら上手く逃げてるけど、あちこちに罠とか落とし穴があるみたいで逃げにくい。



ジェームズ達が使ってくる罠とは全然違うタイプなので、避けるのが結構大変だ。



そういってる間に、土井との距離はどんどん縮まってくる。



(こわっ!!何で無言で追いかけてくんの?マジで怖いんだけど!!)



たまに振り返りながら、土井との距離を確認し逃げ続ける。



このまま走り続けるのは体力的にも不利、スピード的にも絶対追いつかれる。



………つまり、どっかに隠れるのか得策だわ!!





ヒナは、土井との距離を確認しながら曲がり角を勢い良く曲がって一番近くにある扉を開いた。











* * *










 
「つまり、先生達がもう一人現れた天女を極秘で匿ってるって事ですよね」



五年ろ組の鉢屋三郎が、壁にもたれて腕を組んだまま食満を見据えた。



「そういう事だ。先生が言うには綾部、お前が狙われているそうだ」

「……ふーん」

「喜八郎くん、もっと緊張感持とうよ〜」

「綾部もそうだが、斉藤お前も緊張感持て」



綾部は相変わらずボーっとしているし、斉藤は「は〜い」とのん気な声で返事をしている。



本当に分かっているのか?



たったひとりの天女でさえ学園がこんなに荒れているのに、もう一人来たとなったら荒れるどころか崩壊してしまう。



「綾部、今の天女様も少なからず君に興味を持ってるみたいだから気をつけた方が良いよ」



伊作からの忠告を綾部は「はーい」と流し、窓際にストンと腰を下ろした。



伊作も苦笑いだ。



今、天女のおかしな妖術にかかっていない“反天女派”の上級生の忍たまは此処にいる五人だけだ。



下級生に関してはまだはっきり確認ができていないが、上級生に比べて正気を保てていない忍たまの方が少数だ。



その少数の天女派も、年齢的に恋愛感情ではなく、姉を慕う様な感覚がほとんどである。



それ以前に、天女達は上級生や先生達を狙っていたので直接の被害は少ない。寧ろ、間接的な被害が大きかった。………現に、委員会はほぼ休止状態である。



だが、一年は組のきり丸は何故か天女達に人気があった。孤児という生い立ちに付け込み、甘い言葉で誘惑していた。



天女は「家族になるわ」と言って中途半端な優しさを与えたり、土井先生に良い印象を与えたいがために優しい言葉を囁いたりと、あいつも天女に散々振り回された内の一人だ。



きり丸にも一応報告しなければと思ったが、今日はアルバイトに出ているらしくいないらしい。




いや、今日も、だな。




今回の天女が来てから、学園内できり丸を見かけることがほとんどなくなった。



授業と委員会の時以外は、ずっとアルバイトをしているらしい。




………クソッ!


何とかならないのか!!








 
ドタドタドタドタドタドタ!!


すっぱーん!!




「「 !! 」」



障子が勢い良く開かれ、医務室にいた五人は話し合いを止め振り向いた。




 







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