穴から始まる逃走劇3 (3/7)




 
 
 
土井は走り回っていた。



先程からずっと自称魔女の天女を探しているが、一向に見つけられない。



どんだけウロチョロしているんだ。普通だったら少し警戒して、案内した部屋で待つだろ!



その点、今いる四人目の天女は初めの二〜三日は大人しくしてくれていた。しかし、あの時の「一人は寂しい」などと言う媚びた態度は今思い出してもゾッとする。



そういえば、さっき会った時に昼餉の事を聞かれたが大丈夫だろうか。



天女がいる事自体が異例なのに、二人いるというのは正に異例中の異例だ。







なるべく接触は避けたい。






避けたいのに、あの黒峰ヒナという自称魔女の天女は何で私の言う事を聞いてくれなかったんだ!



恐らくこの時間帯なら、四人目の天女は自室で忍たまとお喋りしているだろう。



彼女が飽きて出て来るまでにあの自称魔女の天女を見つけなければ………





そこでふと思った。



昼餉を食べていないので、腹を空かせて食堂へ向かったのでは?



丁度、進行方向は食堂だ。



土井は更に走るスピードを上げて食堂へ向かった。








………が、あの自称魔女の天女より重要な人物を見つけ、そちらの方に走り寄った。







「綾部っ!!!」




土井は、四年生に編入した斉藤タカ丸の隣を歩く綾部喜八郎を見つけ、急いで駆け寄った。









* * *










 
「良かった!無事か!」



土井は、心底安心したように綾部の肩を掴んで微笑んだ。



「土井先生だ〜、どうしたんですか〜?」



綾部の隣にいたタカ丸が、のん気な声で問いかけて来る。



緊張感がないとはコイツの事をいうんだろう。



いかん、今はそんな事より重要な問題があるんだ。



「それより綾部!怪しい奴と会ってないか?」

「怪しい奴……」



綾部が首を傾げて少し考えて込むと、思い出したように「あ」と呟いた。



「トシちゃん三十五号に落ちた訳ありの通行人に会いましたー」

「……そうか、わかった」



変とか怪しいという言葉を聞かない限り、会ってないという事だろうか。



訳ありの通行人………、そんな可笑しな言い方をする人は恐らく学園長のお客人だろう。あの自称魔女の天女を探すついでに一応出られたか見に行こう。



「多分大丈夫だと思うが、怪しい奴か変な奴に会ったら関わるんじゃないぞ?いいな!」



土井は、言い終わるや否や、先程の落とし穴のトシちゃん三十五号のある場所へと走って行った。




 







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