小娘の脱走4 (4/6)




 
 
 
「天女様」




土井は、盆に乗せた昼食を片手に障子の前に立っていた。



自称魔女の黒峰ヒナという少女。可笑しな術を使った事は認めるが、天女でないという証拠はない。



現に、これまでの天女のように“知って”いながら、この世界の事を知らないと嘘を言った。その手は既に二人目の天女が使っているから、もう私達には通用しない。



それに、天女には私達を虜にする変な力があるようで、この世界に来るときに備わるらしい。



きっと彼女もそうなのだろう。











それにしても、返事がない。




というより、





………………気配が、ない?







「……天女様、昼餉を持って来ました。失礼します」




障子を開け部屋の中へ入ると、そこには居るはずの少女がいなかった。





「しまった………っ!」





ガシャンッ!





皿が割れる音と同時に、土井は走り出した。










* * *









 
「学園長っ!!!」



バンッと音が出るほど、勢い良く学園長の庵の障子を開けた。



「?……どうしたんじゃ土井先生」



のほほんと茶を啜っている学園長を見て、「はあぁぁ」と安堵の溜め息をついた。



「何じゃ、人の顔を見て溜め息とは失礼な」

「学園長……良かった、ご無事だったんですね」

「……それはどういう意味じゃ?」



少し眉をひそめ、土井を見る学園長。



「実は…………」







土井は、自称魔女の天女に昼餉を持って行ったが、案内した長屋に居なかった事を伝えた。



「まだ間者の疑いもあります」



土井は、自称魔女の天女が学園長の命を狙って動いたのではと考えていたのだ。



「うむ、気を使わせたの土井先生」

「いえ、ご無事で何よりです」



学園長は、顎に手を当てながら確信めいたように話し始める。



「彼女は恐らく間者ではないじゃろう、天女の線じゃと思う」

「…………しかし」

「実際、いきなり目の前に現れたからのう。………パッとな」



やはり、天女なのか。






とりあえず、不思議な少女だった。





自分を魔女だと言い、命を狙われているので一週間だけ状況把握のため住まわせて欲しいと言った。




目的は一体何なんだ……。




何故、天女達は私達の世界を……忍術学園を壊すんだ……。



土井は、とりあえず学園長の安全を確認したので、消えた自称魔女の天女を探し始めた。




 







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