小娘の脱走3 (3/6)




 
 
 

ザックザックザック



ザックザックザック



ザックザックザック





「………おやまぁ、少し深く掘り過ぎた」



のん気な声が響く。



綾部はその場でストンと腰を下ろし、落とし穴の入り口を見上げた。



綾部喜八郎は、“穴掘り小僧”と言われるほど学園中に落とし穴を掘りまくっている。






約三年前、初めて天女様が現れてからというもの忍術学園から“何か”が消えた。



天女様の被害を受けた先輩や先生達は、天女様が消えると、忍術学園の雰囲気を元に戻そうと心機一転を心掛けていた。







しかし、天女様は不定期に現れた。



もう今回で………あれ、何人目だっけ。まあいいや。



それぞれ特徴がある天女様達だったが、共通していたのは異性を虜にする事と、自分達を“知って”いたこと。





…………何だか、気味が悪い。





今では友好関係さえ崩れてしまい、忍術学園内の雰囲気は最悪だ。



「……………」




僕の場合、一人で行動するのは苦ではない。寧ろ、ずっと一人だった。



それが、忍術学園に入学して初めて友達というものが出来た。



いつの間にか、一人が好きだった自分が、友達といるのも良いなと思うようになった。



天女様との事件で何回か喧嘩したけど、僕達の友情は変わらなかった。



だからきっと、僕達はまた元に戻ると思っていた。思っていたんだ…………。










* * *











 
「………ん?」



どうやら、眠っていたらしい。



恐らく、柄にもなく考え事なんかしていたせいだろう。



「……お腹、空いたなー」



午後は実技の授業があるから、食事は取っておきたい。



「……………」





けど、動くの面倒臭い。





あ、でも、タカ丸さんからお昼ご飯の時一緒に食べようと誘われていたんだった。





あー、面倒臭い。





重い腰をようやく上げると、頭上に人影が現れた。



逆光で何も見えない。



その人影を見上げていた僕は、見えてはいないけど、何となく目が合った気がした。





 







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