もう一人の天女7 (7/7)




 
 
 
見事に落とし穴に落ちたヒナ。



「だっ、大丈夫ですか?!」

『あははーっ、平気へーき!』



心配する土井とは反対に、ヒナの方は楽しそうだ。



シュタッと穴に降りてきた土井に抱えられ、上に飛び上がる。



『すっごーい!ドイ教授は身軽だね!忍者ってみんなこうなの?』

「…………」



抱えていたヒナを離すと、土井は不思議そうに見つめた。



「教授………」

『え、違うのー?』



あまりにもヒナがケロッとしている為、何故か自分が間違っているみたいに思えてくる。



「あの……先生の方で」

『はーい、ドイ先生ね』



へらへらっと笑うヒナは、何の警戒心も持たない子どもみたいだった。



『これ誰が作ったのー?』

「ああ、これですか?四年い組の綾部喜八郎ですよ」

『………キハチロー』



ニヤリと笑うヒナは、先ほどの太陽みたいな笑顔でなく、悪戯を思い付いた悪魔みたいな笑顔だった。



つまり、悪い顔だった。



「………やはり貴女も、他の天女と同じなのですか?」



土井が呟いた一言は、ヒナの耳には届かぬまま廊下で消え去った。



『ドイ先生ー、早く行こー』

「………そうですね」



今までの天女と、少し違うタイプだったので密かな期待を抱いていたのかもしれない。



結局、そうやって天女達は私達を振り回し、惑わし、崩していくのか。



ヒナに急かされ、やっと到着したのは教員の空き長屋。目的は勿論、教員による監視の為だった。









* * *









 
あまり出歩かないように、と土井に言われて部屋に入ったヒナ。



『ドイ先生ってば、あたしの事知らないんだから』



何を隠そう、あたしはジェームズ達……悪戯仕掛け人と渡り合った悪戯小娘よ。



やるなと言われれば、モチロンやっちゃうのがあたし。



それに、キハチローって人の落とし穴に引っ掛かったのよ?



お返ししなきゃね!



そういえば、あの落とし穴………



ヒナがさっき落ちた穴を思い出す。ちゃんとは見てなかったが、立派な落とし穴だったことは理解できる。そして、これが魔法じゃないって事がすごい。



ヒナがあれこれ考えていると、腰元にあるポーチからドサドサッという音が聞こえた。



『………しまった、昨日整理しないままだったから本が倒れたんだ』



家を飛び出したあの日から、あたしは肌身離さずこのポーチを持っている。



いつ、何が起こってもいいように必要な物は全て携帯している。



もしもを考えて、オリバンダーの店で買った予備の杖。


愛用している箒“ウィンド”。


逃げた先の異世界の書物や、ホグワーツの教科書、その他魔法関連の書物。


あとは作り置きしといた魔法薬に、着替えに、みんなとの写真に、お菓子に、悪戯グッズに………あ、一応救急セットも入れたけど何処にしまったっけ?あと何か色々入れてるけど忘れちゃった。てへ。



とりあえず身軽で動きたいので、この持ち運びやすい小さめのポーチを肩からかけられるようにして過ごしている。ポーチには拡大魔法をかけており、中はある意味ワンルームのようだ。



『キハチロー?って人には後で仕返しするとして、まず敷地内探索いっちょやるか!』



障子を勢い良く開け、知らない屋敷の中を走り抜けた。














魔女は、忍者に紛れた


(さて、最長二日で情報収集!)
(そして残りは悪戯ねっ!!)


思いも寄らない爆弾投下


 







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