僅かな変化2 (2/4)




 
 
 
今日は洗濯物のやり方を教えるため、少し早めに自称魔女の天女の元へ向かった。



教えるとはいっても、結局は出来ないからと私達が身の回りの世話をしなければならないのだが。



一応時代が違うので、毎回天女には最低限度の事は教えている。



『やるやる!あたしもやってみたい!』



自称魔女の天女は、私から桶を取り井戸の所まで走って行った。何故そんなに楽しげなのか。



『まずは水だよね!』



井戸の前で右袖を捲り、綱引きのような掛け声を出しながら水を汲み上げようとしている。



……が、やはり昨日と同様に水の重さで、縄を引っ張った体勢のままピクリとも動かない。



まあ、予想通りである。



昨日と同様に、自分が水を汲み上げた。若干悔しそうにこちらを見ていたが、敢えて気付かぬ振りをしておいた。



手本を見せた後に桶に水を入れ、練習用の手ぬぐいを渡した。渡したが、まず板の使い方が違う。どうしたらその持ち方になるんだ。他の天女は先ほどの説明でも、不慣れなりに出来ていたのに。



もう一度手本を見せる。



『もう一回させて!もう一回!』



………違う。とりあえずゴシゴシ擦っているが違う。



もう一度、手本を見せる。三度目の正直だ。というより三回も見せてるのに何故覚えないんだ。しかもこの顔、絶対納得していない。



『ちょっとドイ先生!ちゃんと見てホラ!あたし出来てるじゃん!』



だ、か、ら、
違うって言ってるのに!!



その後、何度手本を見せても出来る気がしなかったので、桶と洗濯板は片付ける事にした。



どうせ、私が世話係なのだ。私がやった方が早いし、他の生徒や四人目の天女に接触する可能性が少ない。



目に見えてしょんぼりしている自称魔女の天女。



悪戯して叱られた猫に見えるのは何故だろう。断じてちょっと可愛いなどとは思っていない。断じて。









* * *









 
「私は授業の準備がありますので、一旦離れますが、長屋からは出ないで下さいね。出ないで下さい」



大切な事だから二回言った。もう一回言いたいが、さすがにそれはしつこいだろうから、目で言おう。絶対出るな。



『はーい』



…………絶対嘘だ。



視線を逸らしてる時点で嘘だ。



「……それでは、失礼します。出ないで下さいね」



もう一度言っておこう。無駄な気もするが……。



部屋を後にするが、きっとまた脱走するだろう。



あああ、い、胃が痛い……!



土井は、胃を押さえながら教材の準備へと向かった。



 







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