友と豆腐と思い出と




 
 
 
俺のクラスには、人気者がいる。



性格は爽やかで、明るくて、男女ともに人気のある奴だ。



そいつの名前は、尾浜勘右衛門。



クラスの学級委員長でもあり、スポーツもできるし頭も良い。ちょっとチャラい感じもあるが、人望は厚い。



そんな彼と友達になってみたい、なんて不思議な感覚が芽生えている。どう考えても、ガリ勉の俺と尾浜さんとは釣り合わないというのに。



「あれ、久々知君また授業の予習してるの?相変わらず頑張り屋さんだね!」

「あ、はい、」



おっと、話しかけられてしまった。あんまり会話は得意じゃないんだけど。



「久々知君さあ、コンタクトにしなよ!せっかく格好いいのに勿体ないよ?」

「俺は、別に、」



何だどうした、何で今日に限ってこんなに話しかけてくるんだ。話題なんてないぞ今朝の星座占いで一位だったんだくらいしか話題なんてないぞ。しかも実はこの眼鏡は伊達眼鏡でーすテヘペロとか言えない。



「おい尾浜ー」

「勘右衛門クンはーやーくぅー」

「はいはーい」



別の友達に呼ばれ去って行く尾浜さんをホッとしたような、どこか寂しいような気持ちで見送る。



廊下の方が騒がしいのでチラリと目を向けると、隣のクラスの双子とバスケットボールを持った活発そうな子がゲラゲラと笑いながら歩いていた。確かあの三人組は、よくバスケットやらサッカーやらで遊んでいる。おそらく今日は、体育館にでも行くのだろう。



尾浜さんも自分の席で友人達と喋り始めたし、残りの昼休みは読書でもしよう。そう、いつものように。









しばらく読書をしていたら、尾浜さん達の方が騒がしくなった。



「見よ!このバランス感覚!!」

「きゃはっ!すっごぉい!」

「バカだ!尾浜マジバカ!」



どうやら椅子に座ったまま後ろに傾けて、椅子の後ろ脚二本でキープしているらしい。



しかし、尾浜さんはみんなの期待通りに後ろへひっくり返った。同時に「ゴンッ」と、尾浜さんの後ろにあった机に思い切り頭をぶつけた。痛そうだ。


 
笑いながら大丈夫かと心配する尾浜さんの友人達。一方で尾浜さんの様子がおかしい。「うそ、わ、忘れてたっ!」と頭を抱えて焦っている。



どうしたんだろう。



すると、尾浜さんがバッとこちらを向いた。



ど、どうしたんだろう。



ずんずんと歩いて来て、心底嬉しそうに笑った。少し涙目だった。



「兵助、ごめんね」



………えっ、あれ?



今俺の事「兵助」って








ゴンッ!!!!!!!








俺は、尾浜さんに頭を持たれ、机に叩きつけられた。



「ちょ、尾浜?!何してんの?!」

「勘右衛門クン?!」

「いいの!!ごめん俺ちょっと用事できたバイバイ!!!」



バタバタと走って行く足音。



ざわつく教室。



しかし、俺はそれどころではなかった。



頭を打ったのと同時に、針で刺されたような痛みが走る。



そうだ、読書なんてしている場合ではない。何で今まで忘れていたんだ!!あんなに大好きで、毎日毎日ずっと一緒にいたというのに!!俺はなんて馬鹿なんだ!!



尾浜さん、ありがとう!!



いや、勘ちゃん!!



俺は、ガタンと席を立ち上がった。



そう、俺は全て思い出したのだ。











「…………豆腐っっ!!!!!」



何で忘れていたんだ!!!俺の馬鹿!!!











(豆腐っ!!豆腐が足りないっ!!)
((…………え?))
とある昼休みの教室で


 








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