突っ走り系名探偵
俺は、高校生探偵の工藤新一。
今は訳あって“江戸川コナン”という偽名の小学生として生活をしている。
この事情を知っているのは、色々な発明品で俺をサポートしてくれている阿笠博士に、俺と同じように幼児化してしまった元黒の組織の一員である宮野志保だ。
彼女もまた“灰原哀”と名前を変えて生活している。
あと俺の事情を知っているのは、俺の両親と関西に住む服部平次だ。
………しかし、最近またあの薬の被害者が現れた。
それも五人同時にだ。
あいつらも黒の組織の取り引きの現場を目撃したために、あの薬を飲まされてしまったらしい。
全く、素人が首を突っ込むからこんな事になるんだ!死ななかっただけ大幸運だ。
そしてさらにもう一人。
帝丹高校の先輩である、追田ちよ子。
ただの変な先輩かと思いきや、追田財閥の娘というとんでもない権力者だった。
一応追田が同じだから気になって調べたにも関わらず、何も出てこなかったのがその権力の大きさを物語っている。別に悔しいとか思ってない全然悔しくない全くもって。
そんな中、偶然見かけた拉致現場。
一瞬の出来事だったが、黒い車に全身黒ずくめの姿を俺の目が見落とすはずがない。
今度こそ奴らの正体を暴いてみせる!正体までとはいわなくても、奴らの情報を聞き出してやる!!
俺は車に付けた発信機の後を追いかけ、とある工事中のダムへと辿り着いた。ザーザーと流れる水の上を走り抜け、黒ずくめの男達と拉致された被害者が入って行った管理棟の物陰に身を隠す。
―――ザザザ……
「やべ!繋がったままだ」
―――ザザ……ちょっと…ザザザ…どこにいるの!
やっぱり灰原か。
さっき探偵団バッジで、黒の組織らしき奴らの拉致現場を目撃したからそいつ等の追跡に向かうと伝えてある。
“黒の組織”と言っていきなり連絡すりゃ、いくら冷静な灰原でもそうなるよな。
「よく聞け灰原、俺は今からダムの管理棟に侵入する!俺から連絡するまでそっちからは連絡はするな!」
電源を落とし、俺は管理棟内部へと侵入した。
* * *
「悪い子だなぁ坊や、ヒヒヒ」
そして俺は捕まった。
だがそのお陰でわかったこともある。まず黒の組織ではなかった。三人組の強盗で、とある金持ちの令嬢を誘拐して身代金を要求しようとしている最中だった。手際は良く、これが初めてではなさそうだ。
そして、俺が思うように動けない原因がひとつ。
「ねぇねぇ、このガキは?殺っちゃっていいの?」
「まあそう焦らないで下さいよ。使える家柄かもしれないんで調べてますんで」
「じゃあさじゃあさ、使えなかったら殺っちゃっていいの?」
「まあまあ、使えなくてもとりあえず今は待って下さいよ」
「はーい」
それが、この男だ。
おそらく用心棒として雇っているのだろうが、力自慢だったり格闘技が得意という感じではない。おそらく殺し屋の類だ。
さて、どうしたものか。
………ガタンッ!!
「んー?だあれ?」
「おい、お前見てこい」
「えっ兄貴!シャドウさんに行ってもらえば……」
「いいから行け!!」
頭をフル回転させていると外から怪しい物音が聞こえ、強盗の一人が恐る恐るドアへと向かった。
俺を含め、今は気絶している女の子も用が済めば殺されるだろう。
イチかバチか、動いてみるか。
そう決心し拘束されている手で腕時計に手を伸ばし、外から戻ってきた男に向かい麻酔銃を発射した。
(まずは一人ずつ眠らせて)
(あの子を連れて脱出だ!)
とある元高校生探偵の反撃
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