意外と潜んでる奴ら




 
 
 
「そうだ、長次と小平太がちよ子ちゃんに会いたがってたよ」

『チョー君とコヘちゃんがっ??!!!行くっ!!今日は保育園休みだからチョー君の家に行けばいるよね!!』

「あ、今週は旅行行ってるよ」

『い゛や゛あああああ!!!!!』



Z印本社の近くにあるカフェで、善法寺先輩にジュースとケーキをご馳走して貰っている俺たち。ケーキうまい。



どうやら中在家先輩と七松先輩も生まれ変わっていて、この時代ではご兄弟らしい。うん、納得。



一方、勘ちゃんは苺のショートケーキを食べ終わり、おかわりしようとしている。いくら見た目が子どもでも善法寺先輩相手に……、あ、ちよ子さんがもう勘ちゃんの分を頼んでる。



兵助は杏仁豆腐を幸せそうにちょっとずつ食べていて、三郎と雷蔵はチョコレートパフェを一緒に食べている。ちなみに俺はレアチーズケーキだ。



「伊作お兄ちゃんみっけ!」

「おれもケーキ食べる!」



バタバタッと元気な足音と共に、二人の子どもが走って来る。あれ、なんか見覚えが……



「こんにちは。また二人で遊んでるのかい?」

「うん!今日はせんぞー先生の宿題をどっちがはやく終わるかきょうそうするんだ!」

「おれトメには負けないもん!」

「むっ!おれだってモンちゃんには負けないもん!」



この見覚えのある光景、そして「トメ」と「モン」という名前。これはもしかしなくても、



「……紹介するね、この近所に住んでる食満留三郎君と潮江文次郎君」

「あっ!はじめまして!けまとめさぶろうです!」

「おれは、しおえもんじろうです!」



食満先輩と潮江先輩は、俺たちとちよ子さんにぺこりとお辞儀する。もちろんちよ子さんは絶賛発狂中である。



「(僕以外は記憶はないんだ)」



善法寺先輩は俺たちに矢羽音を飛ばした後、少し寂しそうに微笑んだ。









* * *









 
善法寺先輩曰わく、食満先輩と潮江先輩の通う小学校の担任の先生が立花先輩らしい。



「あ、もう会社戻らなきゃ。支払いは済ませとくからゆっくりしていってね」

『ポイポイご馳走様!なんかごめんね、いっぱい時間とらせちゃって』

「いいんだ。ちよ子ちゃんにも会えたし、懐かしい子たちにも会えたから」

『?』

「伊作お兄ちゃんいってらっしゃーい!」

「むぐ、……ってらっしゃい!」



にこりと笑ってカフェを出て行く善法寺先輩。俺たちは、奇跡的に全員が同時に記憶を思い出した。でも善法寺先輩は、周りに同級生がいるのに記憶を思い出したのは自分一人だけで……。



きっと、辛かった、んだろうな。



みんなも同じようなことを考えていたらしく、表情が曇っている。



そんな中、食満先輩と潮江先輩は「ごちそうさま!」と元気に挨拶し、俺たちにバイバイと手を振りながら走り去っていく。



………今こんなこと思うのは空気読めないヤツみたいだけど、あんな無邪気な食満先輩と潮江先輩が見れたなんてメタル系のモンスターレベルでレアだ。そして俺が食い終わったのはレアチーズケーキだ。



『……あ、おじさんからメールきてる。そういえば本借りてたの忘れてた返さなきゃ金取られるヤバい』



ちよ子さんは俺たちに「ちょっと付き合って」とタクシーを呼び、自宅へ向かった。



家に着くと、俺たちはタクシーに乗ったままちよ子さんが走って玄関に向かうが、段差で躓きドアに激突した。ドジッ娘ちよ子さんとか何それ可愛い。



ちよ子さんは家に入ってすぐタクシーに戻ってきた。手に持っている本はちよ子さんが読みそうもないようなピンク色の表紙だ。



タクシーの運転手に住所を伝えた辺りで、好奇心の塊である三郎が「それ何の本?」と質問する。俺も気になってたから三郎ナイス。


 
『やだ好奇心旺盛のサブちゃん可愛いやばい可愛いえっと何だっけ本だっけ?これ知り合いのおじさんが図書館のオーナーだから、気になってたヤツ借りてたの』



三郎に渡されたピンク色の本を見て、俺たちは目が点になった。



『その表紙のオネエ系男優がなかなか面白いのよね。顔化け物のくせに妙に女っぽいっていうか』

「へ、へぇ……」

「そ、うなんだ……」



言わずもがな、その表紙にデカデカと写っているのは山田先生(伝子バージョン)だった。



ページをめくりプロフィールの所を軽く読んでみると、ドラマやら映画やら舞台やらと結構出演している。でも全く知らなかった。俳優かマジか。



……今度、山田先生のドラマとか映画観てみようかな。



そんなことを考えていたら、タクシーは目的地に到着する。



ちよ子さんは俺たちを引き連れ、図書館の中へと走っていく。



『おじさんごめん!すっかり忘れてた!ギリギリセーフだよね?!』

「図書館は走らない騒がない!ほら手も洗う!」

『ひいい!』

「……ん?可愛いちび達だな!君たちも手を洗ったら好きな本読んでいいからな……たっ…タダで!」



そう言ったおじさんは、見覚えがあった。



そう彼は、後輩の面影がある。



いつもトラブルを運んでくる一年は組の三人組、きり丸に。



「父さん、そろそろバイトだから行くよ」



予想外の人物に驚いていると、きり丸を「父さん」と呼ぶ青年が近づいてきた。あれ、でもこの声って………



「ああ半助、大学のレポートは終わったのか?」

「後少しだけど、残りは家でもできるから」



それは、俺たちの知っている記憶より少し若い土井先生だった。



「どっ、土井先生?!!!!」



俺は思わず絶叫してしまった。



すると「こら坊主!静かにしないとお金取るぞ!」というきり丸と、ハッとしたような土井先生。


 
「ごっごめんなさい……」



なんだか自分より成長している後輩に怒られるのは不思議な感覚だ。



「(驚いた……、お前達は記憶があるのか)」

「え」



どうやら、土井先生は記憶があるらしい。



「あ!半ちゃん久しぶり」

「ちよ子くん久しぶり」



土井先生とちよ子さんはきり丸に手を振りながら図書館を後にする。二人が「まだあの節約生活続けてるの?」とか「味噌汁は薄めるから味噌の味がしない」などと話しているのを聞き、年齢が逆転しているだけで土井先生ときり丸は変わっていないなと五人で小さく笑った。



土井先生と俺たちが横断歩道で別れる時に矢羽音で「元気でな」と言われた。相変わらず土井先生は優しくて男前だ。



『今日はごめんね?色々連れ回しちゃって』

「全然いいよ!」

「寧ろありがたかった、かな?」

「……そうだな」



ちよ子さんは、勘ちゃんと雷蔵と三郎に抱きついて「なんて可愛くて優しくて可愛くて可愛いの?!!」とまた発狂している。



そんな中、ビルに設置されているスクリーンモニターに軽快な音楽が流れてくる。



うん、このノリ嫌いじゃないかもしれない。俺はパッと画面を見上げ、



“さあ!これで君もモテ髪!”

“purple4も見とれちゃう美しい髪へ”



『あ、最近江々子姉さんが開発したシャンプーじゃん。purple4にCM依頼したんだ』

「…………ちよ子さん、その、purple4って?」

『え!なあにハチちゃん?!purple4?何でも教えちゃう!!実家の近所に弟の同級生のマセガキ五人組がいてね?顔だけしか取り柄がないならアイドルでもやれよって言ったら本当にアイドルやり始めたおバカ共なの!最近売れて調子乗ってるけどね!あとは何が聞きたい?!!』

「あ、もう、大丈夫です」











(……なあ、もしかしなくても)
(うん、四年だね)
(こっちでもアイドルなんだね)
とある元忍者たちと平和な世


 








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