吉報、不思議なお薬




 
 
 
『あ、そうだ』



それは、俺らがちよ子ちゃんの所で生活し始めてしばらく経った時だった。



『アイツに薬頼めば良いじゃん』

「あいつー?」



ちよ子ちゃんがふと思い出したように呟いた。



『ほんとはちびちゃん達はちびちゃんのままがいいんだけど、よく考えれば知り合いに製薬関係の奴がいたんだった。わざとじゃないよ?!!わざとじゃないけどちびちゃん達はちびちゃん達のままがいいんだけどな!!!やっぱ今の話ナシにしていいかな?!!!』



ナンダッテーーーー!!?



ちょっ、そんな大事なこと何で忘れてたのさちよ子ちゃん!!



「ちよ子さん頼む!その人に連絡取ってくれ!」

「もしかしたら元に戻れるかもしれないのだ」



必死なハチと冷静な兵助。



「ちよ子さん、その人に連絡とか取って貰えませんか?」

「ちよ子頼む」



雷蔵と三郎も真面目な顔でちよ子ちゃんに掛け合っている。



『ああぁううぅ………そんなに真剣に頼まれたら断れないじゃないの』



ちよ子ちゃんは何故かパシャパシャとデジカメで俺たちの写真を撮りながら、携帯電話に手を伸ばす。



『………あ、もしもし?久しぶり。うん、ちょっと相談があるんだけど、あー違う違う個人的な内容。うんありがとう、それじゃ後でね』



軽く電話したあと「じゃあ行こっか!」と俺たちを引き連れ、家の前にタクシーを呼ぶ。



俺たちはあまりにも早すぎる展開に追いつけないまま、ちよ子ちゃんの後に続いた。









* * *









 
『あ、これで』

「?あの、」

「大変失礼致しました。社長は調合室にいらっしゃいます」

『ご親切にどうも』



ちよ子ちゃんは受付で何かを見せると、片方の受付嬢に奥のエレベーターに案内される。



ちよ子ちゃんって、敵に回したらダメなタイプだ。



まず知り合いが製薬会社にいるって言って、あの赤ちゃんでも知らぬ者がいない“Z印”の本社に連れて行かれ、社長はこちらですと案内してもらっている。



そして先ほどちよ子ちゃんに何か出されて「?」ってなった受付の子に、先輩らしき受付嬢が「アレについては後で教えるから」とか「アレを持ってる人はヤバい奴だ」等と聞こえる。



………あの受付嬢たちは一体何を見せられたんだろう。



何となくちよ子ちゃんが大物ってことは嫌でも気付いてたけど、でもまさかZ印とはねー。



巷では病院の薬よりZ印の医薬品の方が効果あるって有名だしね。俺も風邪とか怪我とかしたときはZ印の薬だしね。なんかZ印の薬使うと風邪も怪我も一発で治っちゃうしね。



そんなことを考えていたら、ピンポンとエレベーターが目的の階まで到着した。



ちよ子ちゃんはスタスタと迷うことなく進んで行く。



『ポイポイお疲れー。なんかごめんね新薬開発してる時に』

「いいよいいよ!僕も久しぶりにちよ子ちゃんに会いたいなって思ってたから」



え、ちよ子ちゃん、Z印の社長のこと「ポイポイ」って呼んでるの?え、ちよ子ちゃんって何者?



あ、追田財閥のご令嬢でした。


 
それにしても、社長っていうからオジサンを想像してたんだけど声聞いた感じだとかなり若いじゃん。



あとどことなく聞き覚えがあるようなないような……



俺たちはちよ子ちゃんに少し遅れて調合室とかかれた部屋へと、



「体が大きくなる薬ってどういう………って、え、尾浜?」

「へ?」



室内へ入った瞬間、懐かしい匂いと共に“昔”聞き慣れた声に名を呼ばれる。



「……え、善法寺先輩?」



ポロリと漏らした“先輩”という言葉にハッとするも、俺たちの勘がピンと感づいた。



「(お久しぶりです善法寺先輩)」



いち早く矢羽音を飛ばす三郎。



「(……久しぶり、という事は君たちも覚えてるんだね)」




驚いた。



俺たち以外にも、同じ時代に忍たまが生まれ変わっていたなんて。



『あれ?ポイポイ知ってんの?』

「まぁ、ね。それよりさっきの話だけど」

『そうそう、えっと、ややこしい話なんだけどね?』



善法寺先輩に俺たちの事情を大まかに説明するちよ子ちゃん。



とりあえず、今一番気になっているポイポイ呼びについて矢羽音で聞いてみたら、どうやら善法寺の「ぽ」と伊作の「い」でポイポイらしい。何それ可愛い。



俺たちはちよ子ちゃんと善法寺先輩の会話している姿を見上げながら、前世では絶対見ることの出来なかった“大人”の善法寺先輩を不思議な気持ちで眺めた。











(で、作れるの?薬)
(余裕)
とある元忍者たちの先輩


 








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