ぶっ飛びお姉さま現る




 
 
 
『ちびちゃん達ーーっ!ご飯出来たよー!!』



僕たちがちよ子さんにお世話になり始めてから、約一週間ほど経った頃だった。



「ちよ子、またカレーか」

『そう!!こっちがサブちゃん用カレーね!』

「三郎用?」

『ん?サブちゃんのは甘口…』

「ちょっ…!!言うなバカちよ子!!」



僕は三郎が辛いもの苦手って事は知ってたけど、みんなは初耳らしい。



「ぷっ!三郎カレー食えねぇの?」

「食えるし!!」

「ぷぷ、甘口はカレーって言わないよー!」



にやにや顔のハチと勘ちゃんが三郎にちょっかいを出す。



もう、この二人はすぐに調子に乗るんだから。後で仕返しされても知らないよ?



「ちよ子ちよ子。豆腐カレーうまい。豆腐作るのうまくなったな」

『兵助ちゃんに褒められたああああああああっ!!!!豆腐にカレーかける意味がわかんないけど兵助ちゃん可愛いいいいいいいっ!!!!』



兵助はちよ子さんに豆腐の作り方を叩き込んで、毎日手作り豆腐を幸せそうに食べている。今は買い物に行っていないが、家政婦さんがそれを微笑ましく見ているのはいつもの事。



そんないつもの雰囲気の中、玄関の方で“ガタン!!”という大きな物音が響いた。



「「 !! 」」

『ん?』



一瞬で警戒態勢になる。



住み込みの家政婦さんは、今さっき買い物に行ったばかりだから、こんなに早く戻るわけがない。



つまり、鍵がかかっているはずの玄関が開くのはおかしい。



そうこう考えているうちに、ドタドタという足音が近付いて来る。



僕たちが警戒心を増す中、ちよ子さんが面倒くさそうな顔で「あー、……来たよ」と呟いた。



それと同時に部屋のドアが、



バァァァァンッッ!!!!





「ちよ子ちゃんっ!!!何でこの前来るななんて言ったの?!!何でなの?!!ねぇちよ子ちゃああああああんっ!!!!」



入って来たのは、ド派手なショッキングピンクのスーツを身に纏った女性だった。


 
『ちょ、くっつかないで、果てしなく鬱陶しい』

「そんなヒドいわちよ子ちゃん!!約一ヶ月振りなのよ??!!!あたしはちよ子ちゃんに会いたくて会いたくて仕方なかったのに!!帰国の日にちよ子ちゃん家に寄るねって約束してたのになんで来るなって言ったのちよ子ちゃ……………、あら?」



ちよ子さんに抱きついていた女性が、僕らを視界にとらえた。



「え、ちよ子ちゃん?」

『何よ』



僕らを見たままニコリと微笑む女性。



しかし、目が笑っていない。



「ちよ子ちゃん。このガキ達は何。誰との子?相手の名前は?住所は?」

『ちょ、何する気?』

「消す」



え?



えええええええええっ?!!!



「ちょちょちょっと待ってください!僕たちちよ子さんの子どもじゃ」

「ママー!カレーおかわり!」



勘ちゃんんんんんんんっ?!!!



何言ってんの?!!!!!このタイミングで何言ってんの?!!!!!



『勘ちゃんがママって言ったああああああああ可愛いいいいいいいっ!!!ママって言い方かあああわあああいいいいいいっ!!!!』



ちよ子さんも落ち着いて!!まずその女の人止めて!!どっかに電話してるから!なんか「金はやるから調べて消してこいや」って電話してるから!まずい展開になってるから!!



「……ママ私もカレーおかわり」

『おぎゃああああサブちゃああああああああん!!!サブちゃんのママ呼び可愛いいいいいいいいっ!!!』








三郎調子乗り過ぎぶっ飛ばす。



このタイミングでママ呼びした三郎に殴りかかろうとした時、ちよ子さんが「実は訳ありなのよ」と簡単に説明する。



どうにか納得したようで、ちよ子さんの子どもじゃないとわかった瞬間に「よく見たらこの坊や達可愛いいいいいいいっ!!!」と豹変した。なんと言うか、ちよ子さんと同じタイプみたいだ。


 
「とりあえず訳ありなのはわかったわ。困った事があったら連絡しなさい?また出張だから、もう行かなきゃいけないけどちよ子ちゃんの頼みなら何でもするからねっ!!!」

『そんな事より、私が頼んでたことは出来た?』

「当たり前じゃないっ!!ちよ子ちゃんの頼みだもの!!トータル三十分のドキュメンタリーDVDだから、楽しんでね!!あ、そうそう。例のゴリラだけど、ちゃんとあたしの勝負下着で誘惑したからね!!」



………ん?



え、ゴリラ?



え、誘惑?



『今度はどこに行くの?』

「とある巨大洞窟の最深部あたりの地底湖の水がね?特殊な成分があるらしくてね?それの調査に行くの」

『私、地底人の剥製が欲しい』

「わかったわちよ子ちゃん!!捕まえてくるね!!剥製はどんなポーズがいい??!!!」

『グリコ』

「任せて!!!』



最後に僕たちをひとりひとりギュッと抱き締めてから、その人は去って行った。



……結局、あの人は誰だったんだろう。



一気に静まり返った部屋で、ハチが恐る恐るちよ子さんに問いかけた。



「えっと、あの、ちよ子さん。さっきの女の人って………」

『え?あ、ごめんね!!!紹介しなかったね!!!アレは私の姉で、江々子姉さん。頭おかしいでしょ?ごめんね?』



ああ、お姉さんだったのか。



とりあえず、江々子さんがちよ子さんを大好きだってことは理解した。



『ねぇねぇ!このDVD早くみんなで観ようよ!』

「いったい何のDVDなんだ」



三郎がちよ子さんからDVDを取り、何も書かれていないパッケージを眺める。



『江々子姉さんが出張でとあるジャングルに行ったんだけど、そこでゴリラを誘惑してって頼んでたの!それで、誘惑が成功して近寄って来たところを亀甲縛りにしてる一部始終を撮影するようにもお願いしてたの!』

「「……………」」



……あ、そう、なんだ。



僕たちは、何とも言えない表情でテレビの前に座った。











(あははははっ!
ゴリラが亀甲縛りされてる!)
((………))
とある元忍者たちと
嵐のような姉、江々子。


 








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