金持ちですけど何か




 
 
 
私の父と母は適当である。



私は追田ちよ子、高校三年生。その名の通り、泣く子も泣く追田財閥の身内である。



父(社長)は、母(副社長)と共に、私に対してとてつもなく適当である。



追田家は二人の子どもしかいないと言われているが、実際は私を含めた三姉弟である。



上から追田江々子(ええこ)二十四歳、私ちよ子が十八歳、そして末っ子の助(すけ)が十五歳。



江々子姉さんは私と助を溺愛していたし、そんな私は助が大好きだった。“だった”というのは、私は小さい頃の助が好きだったという意味である。今は私よりデカいし可愛くないから論外である。



こんな感じの仲良しな姉弟だったのだが、私が十歳の誕生日の時に事は起こった。







「誕生日おめでとー。ちよ子の誕生日プレゼントはね、」

「なんと、」

「「 自由でーす! 」」







パァーンッ、とクラッカーを鳴らしながら楽しげに笑う両親。



「パパ達の跡を継ぐのは長男と長女一人ずつだから、ちよ子はナシって事になるだろ?」

「助はパパの跡を継ぐでしょ?江々子にはママの化粧ブランドを継いでもらうでしょ?だからちよ子は自由なの〜」



楽しげに話す両親の言葉を、とりあえず自分なりに解釈し理解する。私は齢十歳にして、将来の選択権を貰ったらしい。



「あ、でも追田家は出た方が良いよ。色々マスコミとか暗殺者とか面倒でしょ?お金はいっぱい振り込んであげるから許して?」

「書類上で他人になるだけだから、大丈夫よね。ちよ子とママ達はラブラブ家族だものね!」



楽しげに話す両親の言葉を、とりあえず自分なりに解釈し理解する。私は齢十歳にして、家を追い出されるらしい。マジか。



「別にちよ子が嫌いとかじゃないよ。ちよ子は大好きだよ。愛故だよ愛故」

「ママもちよ子だぁ〜いすき!」



この親、適当だな。



こうして私は、齢十歳にして家を追い出され、家政婦と共に別宅に住むことになったのだった。








* * *








 
あれから私は、一般人女子として日々を過ごしてる。



家政婦と家を追い出されてから約十年。メールやら電話は毎日くれるし、父と母の時間が合えばビデオ通話もよくやってる。愛されてないわけじゃないし、自由に楽しく過ごしてるのも事実なので、あの時の“自由”のプレゼントはもの凄く感謝している。



今日は海外に出張していた江々子姉さんの帰国の日なので、早々に帰宅させてもらった。授業はしっかり受けたので問題はない。



江々子姉さんは面倒クサいけど、私の頼みなら何でも聞いてくれる。今回の出張は幻の美容成分があるという花の蜜を調査するために、とあるジャングルへ行っていた。そして、ジャングルに行くついでに頼んでいた事をやってきてくれたらしい。昨日メールで「ちよ子ちゃんに言われた通り、ジャングルでゴリラを誘惑してきたからね!」と届いた。しかも私の要望通り、近寄ってきたゴリラを亀甲縛りにする瞬間の一部始終を撮影したらしい。これは是非見たい。



そんな帰り道、私はいつもの公園を横切っていた。ここを横切らないと物凄く遠回りになるのだ。



『………んん?』



誰もいない公園なのに、私の可愛い子ちゃんレーダーが反応している。え、何、どういう事?



にゃあ、とすり寄って来た猫の喉を撫でていると、その猫が近くの茂みに飛び込んだ。よし、そっと近付いて脅かしてやろう。



そろりそろりと茂みに近付き、大きめの声で「わっ!!」と叫んだ私は固まった。








ちっさい子発見。




ちっさい可愛い子ちゃんを発見しましたあああああああうええええああああああああっ!!!!!!!!!



ごっごごごご五人も!!!


 
隊長!!五人の可愛い子ちゃんを発見しました!!!うふぉぉぉぉぉ可愛いいいいいっ!!何でこんなダボダボの服着てるの可愛い。この服って確か名門の大川学園のやつじゃんそれにしても可愛い。何度か声かけたけど起きない。これは事件だね?とりあえず私の家近いし、連れて帰って事情を聞こう。誘拐じゃないぞ保護だ保護保護。それにしてもきゃんわいいねえええ。双子ちゃんもいるじゃないの可愛い可愛い可愛いいいいい。



『でも五人も運べない』



問題発生。



いくら可愛くて小さい子だからといっても、か弱い私に五人も運べない。どうするか、うーん。



「あ」

『あ』



グッドタイミング。



『丁度良いところに。阿笠博士もたまには人の役に立つんですね。この子達運ぶの手伝ってくださいよ』

「ちよ子君、相変わらずじゃな」



スーパーの買い物袋を持った知り合いのおっさんに遭遇した。なんて運が良いのかしら。ていうかいい加減エコバッグ買えよ。何の博士だか知らないけどエコバッグ使えよ。社会に貢献しろよ。そんなんだからアナタの腹は引っ込まないんだよ。



「ところで、この子達とは?」

『この子達。見て可愛いでしょ?たぶん遊び疲れて眠っちゃったのかな何それ可愛い!じゃなくて、呼んでも起きないから体調が悪いんだと思うの。だから私の家でじっくり眺めながら看病しようと思って』

「………これは、もしや!」

『?』



阿笠博士が顎に手をおいて、考えてるポーズを取る。そのポーズおっさんがしてもキマらないよ。



「わしの家に運ぼう、少々この子らに聞きたい事がある」

『えっ!阿笠博士の家!?そっちの方がいい!!ねぇ哀ちゃんいる??もう帰ってる??本当あの子のツンデレ可愛い過ぎてツラいしぬ萌えしぬ!あ、コナンのガキはいないでしょうね?あいつ全く可愛いげがないから鬱陶しいんだけど』

「ちよ子君、相変わらずじゃな」











(睫毛長い可愛い!ボサボサ可愛い!)
(……)
(この子の髪可愛い食べちゃいたい)
(……)
拾われた元忍者たち


 








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