大きすぎる後ろ盾




 
 
 
「う………ん?」



頭に鈍い痛みが走る。



つい先程、前世を思い出した時と似たような感じだ。



ゆっくり目を開けると、布団の中にいた。



何だ夢だったのか、前世を思い出したことも全部、夢か。そうだよね、前世が忍者で、忍術学園の同級生と再会なんて夢のような話だよね、



…………ぐう。



「おい、雷蔵!」



小声でゆさゆさと揺すられる。



「……うーん、やめてよ三郎今忍者の夢見てるのに」

「夢じゃない!しかもそれどころじゃないんだ起きろ!」



あれ、今度はハチの声がする。あれ、うーん何か訳わかんなくなってきた。前世を思い出したのって夢だよね?普通前世なんて覚えてないし。でも僕覚えてるよ?忍者だったもん。あれ、これ自体が夢?うーん、おかしいな。今まで八左ヱ門って呼んでたのにハチって呼んでる僕、あれ?うーん、うーん、どういうこと?僕って前世覚えてるの?うーん、うーん



…………ぐう。



「雷蔵!お願い起きて!」



三郎がさらにゆさゆさと揺さぶる。



「……はっ!」



しまった、また寝てた。



「ごめんね、また寝ちゃ………て、た、って、え?え?三郎?ハチ?兵助?勘ちゃん?」



え、何か、小さくない?



何か全体的に小さくない?



え、何事?



「雷蔵、あの黒ずくめの怪しい奴ら覚えてるか?」

「………うん、覚えてる」

「私と勘ちゃんとハチは恥ずかしながら気を失ってしまったが、あの後のことを兵助が覚えいた」

「俺たちを殴って気絶させた後、何かを飲まされたのだ。錠剤みたいな感じだったから、恐らく毒だと思う」



毒、か。



この時代では、その言葉は聞き慣れていない。そして、平和という素晴らしい時代だということにも感謝している。



「飲まされてすぐに意識が朦朧としたし、即効性の毒だったと思うのだ」


 
では、この現象は何なのか。



昔は少々の毒には免疫があったから、すぐに処置をすれば命を繋ぐことは出来ただろう。



しかし、今は毒とは全くの無縁であり“死”を覚悟した。



それがまさかの、幼児化である。



「……不思議、だね」

「まずここはどこだ」



とにかく今の状況把握が最も先決であり、寝かされていたベッドから降りた瞬間……音もなくドアが開いた。



「「 !!? 」」



一気に警戒態勢に入る僕たちとは逆に、のん気な叫び声が響き渡った。



『起きたのねちびちゃん達!!!!ひゃあああああみんな可愛いいいいいい!!!ヤバいさっき博士からくすねた饅頭リバースしそうなくらい可愛いいいいいいううおおええええぇぇっゲホッぐほっ!!』



…………だ、大丈夫かな?



「(……どうする)」

「(とりあえず探ろう)」

「(了解)」



矢羽音をばんばん飛ばしまくって、状況把握に徹底することになった。



「おねえちゃんだあれ?」



ぶはっ!!!!!



ちょ、ちょちょちょちょ、ちょ、ちょっと待って!!三郎やめて!!似合わないからやめて!!だめやめて笑っちゃうやめて!!!!!



そう考えるのは僕だけじゃないらしい。勘ちゃんとハチも笑いを堪えてる。かなりギリギリラインで。



「(三郎似合わないのだ)」



ぶっは!!!!!



兵助が言っちゃった!!兵助が包み隠さずドストレートに言っちゃった!!確かに兵助はサラッと言うタイプだけど今だめ!!今は言っちゃだめ!!!!!



昔では考えられないこの緊張感のない雰囲気。僕たちの忍としての感覚が鈍っている証拠である。やはり時代が違うんだなあとしみじみ考えていると、さらにもう一人現れる。



このおじさんの登場で、割と緊張感のある雰囲気に戻った。そのきっかけとなった「君達の目覚める前の話が聞きたい」の台詞。それは僕たちが縮んだと知っている口振りで、正直判断に困っている。


 
「(どうする)」

「(うーん、)」

「(あいつらの仲間かも)」

「(うーん、)」

「(その可能性もあるな)」

「(うーん、)」

「黒い人に薬飲まされたのだ」

「(うーん、………え?)」




「「兵助ええええっ??!!!」」



矢羽音で会話している中、ずっと黙っていた兵助が口を開いた。矢羽音ではなく、もろに。



「やはりそうか、」

『え、何どういう事?』



最初に来た女の子も、理解できていないらしい。ちなみに言うと、僕たちも理解できていない。え、どういう事?



「実はな、」



そして阿笠博士というおじさんから説明された内容は、信じられないような内容だった。まあ、前世を思い出した僕たちも信じられないような話だけどね。



『よくわかんないけど、私がこの子達を匿えばいいんでしょ?うちなら家広いし家政婦しかいないし金の力でまずい証拠は消せるし』

「ちよ子君、言い方が……」



訳のわからぬまま話は進んでいく。



「あの、僕たちはどうすれば」



とにかく今の状況を把握させて欲しい。小さくなった理由は何となく理解した。でも、小さくなった僕たちはこれからどうすれば良いのか。



『待っててねちびちゃん達!!すぐに手を打ってあげるからね!!!いやんそのちょっと警戒してる目可愛いいいいいいううおおおお゛お゛お゛お゛お゛アホ大臣最高ォォォォォ!!!!』

「アポトキシンじゃ」



こっそりと阿笠博士が、彼女は小さい子が好きなだけだから大丈夫だと説明してくれた。



「その制服は大川学園の子じゃろ?ちよ子君のお祖父さんが学園長をしとるから安心なさい」



えっ、



今、なんて?



えっ、もしかして彼女、



と、とんでもない権力者じゃ……











(あ、じいちゃん?私私)
(は?詐欺じゃねぇよ浮気バラすぞ)
(どうでもいいから権力貸して)
とある元忍者たちは
大きな後ろ盾を手に入れた!


 








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