08.君に触れたがる手


幼なじみであるパウリーの手は熱く、丸々とした小さな手だった昔とはもう違っていた。
体温は思ったより低くぬるい。男の人らしい角張った形浮かぶうっすらとした血管。手の甲にはたくさんの小さな傷とかすかに赤い縄の跡がある。
そういえばこの前タダで船を作れと襲ってきた海賊をパウリーが返り討ちにしたらしい。新聞にでかでかと載っていたことを思い出した。

「っハレンチだ!!」

パウリーの手を観察しつつ手の甲のたくさんの傷の一つ一つにそっと触ってみたら予想通り大きな声と真っ赤な顔で怒鳴られたあげく頭を叩かれた。

「…痛い」
「お前が、いきなり…触れてくるからだろうが!!」

パウリーはもうとっくに二十歳を超えているしパウリーと同じ年の私だって若くはない。手が触れあっただけでここまで大騒ぎする程の子供じゃない。でもそんなことをパウリーに言ってもきっと無駄だろうな。

「…ところでさ、
パウリーは傷痛い?」
「はぁ?」
「手の甲にいっぱい傷がある」

自分の手の甲を見てやっと私の言っていた事が分かったようで自分で傷を触りだした。

「そうでもねえよ」
「…」
「むしろこの傷は誇りだ。
俺がガレーラを守った傷と船を作り上げた証しかねえからな。」

パウリーの事が、髪の毛の金色みたいにキラキラして見えた。キラキラに見えるパウリーは自慢気に誇りだ!!と連呼している。その姿は男らしい、というかなんというか…とりあえず私はいいと思った。

「…って何また触ってんだよバカ!!ハレンチか!!」
「…あ、ごめん!!」

なんだろう。私、変だ。さっきまで手が触れ合っただけだとか言っていたのに今はなんだか恥ずかしい。パウリーのハレンチ発言も大げさだなんて言っていたのに今や自分だって似たようなもんだ。私の顔は多分パウリーと同じくらいに赤い。それに脈を打つのが何時もより早い。こんなのは知らない、今まで何十年とパウリーと一緒にいたけれどこれは初めてだ。甘ったるくてなのに泣きそうになる。

「…ごめ、パウリー」
「なんで泣きそうな顔するんだよ」
「わかんない、」

分からない。本当に突然すぎる。パウリーがキラキラに見えて男の人に見えた途端これだ。息が苦しい。



そんな異常事態なのに私はまたパウリーの手に触れてゆっくりと指で彼の誇りである傷に触れた。

君に触れたがる手


それは恋した時の気持ちによく似ていた

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執筆謝様の後書き

素敵なパウリー&ジャブラの企画「Bow!」様提出!!ありがとうございます(^o^)



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