02.どうしよう好きみたい



※学パロ



「誰がたいやきなんて頼んだよ!」
「てめぇが自分で頼んだんだろうが!」


ジャブラが購買にお昼を買いに行くと言うのでついでにわたしの昼食も頼んだ。
待つこと10分。
お嬢様ーと気の抜けた声でわたしを呼んだ奴の手には、まだ暖かそうな、たいやき。


「わたしが頼んだのは、たこやきだー!!」


ありえない。まったくもってありえない。
普通たこやきとたいやき聞き間違えないよ!


「まぁ間違っちまったもんは仕方ねェだろ」
「嫌だよ!あんこ嫌いなんだよやなんだよ」


仕方ない。自分で買いに行こう。
鞄から財布を出して中身を確認すると、ああそう。そういうパターンね。


「金がねェェェ!」


ふざけるな。なんでジャブラなんかにわたしのお昼の邪魔されなきゃいけないんだ!
仕方なしにジャブラのお昼ご飯を貰おうとしたらもう食べ終わってやがる。
なんという食欲だ。恐るべし高校男児。
しかし、間違えたのはジャブラの方だ。
たいやき代くらい出してもらおう。


「おれにそんな金があるわけねェだろうが」
「はぁ!?間違って買ってきといて何それ!」


うわーん酷いよルッチに言いつけてやろうか。
そう言えばジャブラは機嫌を損ねたように顔をしかめた。


「お嬢様こそ買いに行かせといてお礼もなしか!」
「あーはいはい、わざわざわたしの嫌いなたいやき買ってきてくれてありがとうございますー」


そういうとジャブラはますます不愉快そうに顔をしかめた。
怒りたいのはこっちだよ!


「なんだその言い方は!」
「ジャブラこそ間違って買ってきて謝罪のひとつも無しですか!」
「てめェだって聞き間違いくらいするだろうが!」
「そもそもたいやきなんかうちの購買に売ってないものわざわざ頼んだりしないよ!」


徐々にエスカレートしていく言葉の応酬にクラスのひとたちもちらちらとこちらに視線を寄越してくる。


「ジャブラのなまず髭!」
「うるせェ、数学14点だったくせに」


ななな、なんでそれを知ってるんだ!
あ、隣の席だからか。
いいんだよ、国語は78点だったから。


「うるさいよ、グラサン!長髪!三つ編み!」
「馬鹿、幼児体型、貧乳」


ジャブラの発言はかなり聞き捨てならないけど、パウリーが破廉恥だ!と喚くのはいつものことだから気にしない。貧乳とか幼児体型とか、き、気にしてるんだぞばかやろー。

「ジャブラのいけず!変態!いけめん!」


あれ、あれれ。
なんか最後のはちょっと違った気がするよ!?
ジャブラもちょっとびっくりしたようにわたしを見ている。


「う、えっと、あとは、笑い方が豪快!いい食べっぷり!なんだかんだで優しい!」


あれれ、おかしいな。
褒め言葉しか出てこないよ。
どうにかジャブラの悪いところを探そうと睨みつけてみるけど一向に見つけられない。
んん、素敵な髭。って違うよ!
頭を悩ませているとスパンダム先生に呼ばれてたルッチが帰ってきて、わたしを見てジャブラを見て、それからにやりと笑った。
うわ、悪い顔!


「痴話喧嘩か」


ルッチはそれきり無関心そうにパウリーたちがお弁当を広げる窓側へと向かった。
え、何がなんだって?
誰と誰が痴話喧嘩?
ちらりとジャブラを窺うとジャブラもぽかんとしている。
そんなところも格好いい。…って、あれれ、あれ。違うちがう。
だけどおかしいな。なんだか胸がきゅんとするよ。


「ジャブラ、」
「ななな、なんだよ!」

またどやされると思ったのか、慌てて顔を背けたジャブラに近寄って耳元で囁くと、バカヤロウ!とどっかの誰かみたいなことを言って、唇を奪われて、それからおれもだ!と叫ばれた。
わたしとジャブラ、ふたりして顔を赤くさせているのをルッチがニヤニヤと見つめていた。
きっと、ジャブラに心から怒りを感じない時点でわたしは彼に絆されているんだと思う。



「ジャブラ、」
「ななな、なんだよ!」
どうしよう好きみたい
「…ッバカヤロウ!おれもだ!」

(おおお前ら、は、破廉恥だ!)
(あ、教室だって忘れてた)
(お嬢様、逃げるか)




――――――――――

執筆者様の後書き

とても楽しく書かせていただきました。
素敵な企画に参加させていただきまして、本当にありがとうございました。
拙い文章を読んで下さった皆様と、素敵な企画を立ち上げて下さいましたウルフ様へ、最大級の感謝を込めて。




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