驚きました。
『ラァァビィッッ!!!!』
「おわっ!!!!first!?
いきなりどうしたんさ??」
教室の中へ足を踏み込んだ瞬間、いきなりfirstがオレに抱きついてきた。
彼女の身長は丁度、オレの胸のあたりまでしかない。
だからfirstは必然的にオレの胸に顔を埋めるような体勢だ。
普通、女子高生が男子高生に抱きつかないんさね……
でも、この状況は男として非常においしい。
じわじわと顔が緩んでいくのを必死で隠しながら、オレは顔を覗き込もうとしたが、firstはいっこうに顔を上げてはくれなかった。
「first〜??何があったか、言わないと分からないんさ?」
『う゛ぅ………』
少しくぐもった小さな声、firstの肩は震えている。
そしてオレは、胸に温かな雫を感じた。
その感触にハッとして、今彼女がどんな顔をしているのかにオレはやっと気付いたのだ。
慌てて背を丸めて、小さな彼女と無理やりめを合わせる。
すると、思った通り。
firstの瞳から、綺麗な雫が零れ落ちていた。
「え゛ぇぇっっっ!!!!??
なんで泣いてるんさぁっっ!!!!」
『うぅぅ……っ…ラビィ…』
泣きながらfirstはまたオレに抱きつき、ぐりぐりとオレの胸に頭を寄せる。
ヤバい、
この状況はすこぶるヤバい!!!!
「ちょ……first!?
と…とりあえず、落ち着いて説明するさ!!
オレ、意味分かんないさね!!」
ぎりぎりで理性を保ち、firstをひとまず離す。
firstはやっぱり泣いていた。
firstの泣いた顔なんて、初めて見た。
何か、よほど辛いことがあったに違いない。
少しは落ち着きを取り戻したfirstを椅子に座らせ、オレは前にしゃがみ込んだ。
「first、何があったんさね??
ゆっくりで良いから、話して欲しいさ………」
『あ…あのね……っ…』
firstの頭を優しく撫でれば、彼女はまだ少し震える声でちゃんと話出してくれた。
『前…提出しなきゃ……いけない課題、あった…じゃない………??』
「あー…
政経と倫理のやつなんさ?
first、それ、
一週間前の話さね……
んで?それがどうしたんさ??」
『あ…あのね……それが…
出したと思ったんだけど……
私、まだ家にあった……の』
「…………………。
first、それ、
出してないんさね。
しかも、よりによって社会系のやつなんさ……」
社会系の教科。
それは、数ある教科・科目の中で、最も提出物を忘れてはいけない魔の領域。
それが、この学校の暗黙の了解だった。
何故ならその教科の主任教師は、
あ の、
クロス=マリアン先生だから。
それなら、あのfirstが泣くのも分かる……。
「first……それ、
かなりヤバいさ………。」
『う゛ぅっっ………』
俺の目の前の憐れなfirstは、また大粒の涙を零した。
『本っっっっ当に
ごめんねぇぇぇっっ!!!!
ラビィィっっ!!!!』
「大丈夫なんさ、今からオレも一緒に……………って…
え????」
firstは、机の中から何枚かのプリントを引き出し、オレに差し出す。
握らされたそれは、見覚えのある字で、完全に解答された政経と倫理のプリント。
名前の欄には、
ラ ビ
「は……?これって…」
『うん…ラビの……
ごめんね??』
少しだけ首を傾げてオレを見るfirst。その顔は、次第にぼんやりとなり、オレは自分の頬を温かな何かが伝うのを感じた。
*****
「マジでか……」
『うん、マジ。
あ。ラビ、早く行った方がいいよ。また伸びたら、二回殺されちゃう。』
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