お友達ができたでごんす。
「あ、first。
君と友達になりたいって人がいるんですがね、
僕的にはあまり紹介したくないんです。」
『はひ??』
いきなり何を言うかと思えば、本当に何なんだ。
私は半分口に入れかけていた大きめの煎餅を口に押し込み、次に手をかけた。
これ歯に詰まるな…
お茶お茶……
『え?何??どういうこと?
アレンくんってそんな紹介出来ないような悪い友達いたの?
あ、貴方自身が腹黒いから仕方ないか、愚問だったね。
ごめんごめん。』
「本当に……、
貴方のような熱いお茶片手に大きな煎餅を割りもせず口に押し込む色気の欠片も無いおばあさんみたいな普通の女子高生という規格から著しく逸脱した人をこの純粋無垢な僕の友人だと言って紹介したくないんですよ。
あ。でも、僕と君とは友人関係でも何でもない赤の他人でしたね。間違えました。すみません。」
『待て待て待て待て……
ねぇ。今のそれ、何倍返しぐらい?』
「そうですね。1.2倍ぐらいですかね??」
『あ、そう……
じゃあさ、紹介したくないのって私?
それともその相手の人??』
「勿論、君に決まってますよ。
愚問ですね。」
『…………。』
「あ。first、最後の一枚です。僕が貰いますよ。
で、その友人がですね…」
何でも、
私を可愛いと、凄く気になるのだと、その人は言ったらしい。
でもね、アレンくん。
それをすっごく嫌そうに言わないでくれるかな。
不本意なのは十分承知だから。
でも、私のことをそんな風に思ってくれる人がいるのだと思うと、素直に嬉しかった。
『え、やっぱり私の美貌!?
気品溢れる性格!?
どっちもか、照れるなぁ!!!!』
「調子に乗らないで下さい。
僕のテンションが下がる一方です。」
『え?むしろ上がるでしょ!!
こんな綺麗な人と居れて!!』
勝手に言ってろよ、
正にそんな様子でアレンくんは明後日の方向を向いた。
だってさ、そんなの言われたのはじめてだもん!!嬉しいもん!!
私のテンションは最高峰へ!!
「あ。噂をすればなんとやらですよ。
first、あの人ですよ。」
アレンくんが私の後ろを見て、手を振る。
そして、パタパタと近づいてくる軽やかな足音。
どれどれ、相手様の顔を拝むとするか……
完全にピノキオ状態な私は、何の準備も無しにそのまま振り向いたのだった。
「アレンくん!!
ちゃんと話してくれた??」
「はい。一応言いましたが…
コレがfamily firstですよ??
近くで見て気が変わったでしょう?
リナリー??」
……………。
アレンくん、今、何て言った…?
そして、今、私の目の前に居るのはもしかして……
あの、
リナリー=リー!!!!!!!!!???
「気なんて変わらない!!
あの…familyさん……
私とお友達になってくれませんか?」
私の目の前で、ふわりと微笑むリナリー=リー……
あ の 、 リナリー=リー!!!!
そのあまりの美貌に、落ちた男は数知れず。しかし、未だ嘗て、彼女を落とした男は居ないという…正に、Ms.高嶺の花!!
そんな彼女が私と友達になりたいだと!!?
これはドッキリか!?
ドッキリなのか!!!?
助け舟を求めて振り返れば、そこには肩をすくめる白髪だけ。
ドッキリでは…ない!?
私は勢いよく立ち上がり、頭を下げた。
その角度、ジャスト90度。
『あ……あっしは…family firstでごんすっ!!
よろ…よろし…よろしうたのんまんすん!!!!』
………………。
うわぁ…世界ってこんなに静かなんだぁ……
「何言ってんですか、first。
馬鹿ですか?
君は馬鹿なんですか??
リナリー、やっぱり止めた方がいいですよ。馬鹿が移りますよ。」
呆れかえった調子で白髪が言う。
ああ、分かっているともさ!!
変な口調な上に噛んだしね!!
終わった……私の人生最大のチャンスは終わったんだ…
最後にあの綺麗な顔をもう一度見ておこうと、恐る恐る顔を上げる。
たぶん、今までに無いくらいに憐れんだ目だろうな……
しかし、予想外なことに覚悟を決めて見たその先に居たのは紛れもない天使様であったのだった。
「こちらこそよろしくね、firstちゃん。」
わぁ…世界ってなんて薔薇色!!
*****
「firstちゃんってすっごく可愛いよね!!」
『そ…そんな滅相もないっ!!』
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