転校生が来ます。
「first、聞きましたか?」
「何をよ??」
ついさっき終わった授業の眠気が未だに取れない。
大きな欠伸をひとつ。
ダラリと机に体を預け、私は外を見たまま返事を返した。
「お、アレン。
何の話なんさね?
面白い話なんさ??」
「えぇ、なかなか面白いです……って…
first、貴女聞いてませんね。
えいっ!!」
『え、なっ……冷た!!』
首筋に冷たい何かが当たる。
反射的に振り返ったそこには、黒い笑みを浮かべた白い悪魔が購買のジュース片手に、私を見下ろしていた。
「返事するなら、ちゃんと話、聞いて下さいね??」
『は…はい……
で、アレン様。
お話というのは…?
もしかして、また神田ちゃんがやらかしました??』
「いえ、今日の奴は特に何も。
あ、たださっき、僕が奴の昼食の蕎麦に仕掛けておいた
爆☆わさびつゆ(激辛)
をなんの躊躇もなく食して、盛大に吹いてたくらいです。」
『え、何その世紀の瞬間!!
すっごく見たかった!!!!
何で呼んでくれなかったの!!』
「それなら心配無く。
抜かりはありませんよ。
ティムに録画済みです!!」
『やったぁ!!』
「お前ら…命知らずさね…」
はい、とティムを手渡され、私とアレンくんはいそいそと鑑賞体勢に入る。
ラビはそんな私たちを憐れみの目で見ていた。
「ラビ。
何でぼーっとしてるんですか。
僕、神田に掴み掛かられたときに、犯人はラビだっ!!ってちゃんと伝えておきましたよ。」
「…………は…?」
「クソウサギぃっっ!!!!
出てきやがれぇっ!!」
聞こえる聞こえる、
憐れなラビを魔界へと誘う悪魔の雄叫びが。
にやりと笑う私とアレンくん。
みるみるうちに血の気が引いていくラビ。
そして次の瞬間には、ラビは目の前から消えていた。
正に脱兎の如し。
ぱぁんっっと扉が開けば、其処には鬼神がいた。
クラス中が静まり返ったのは言うまでもない。
「おい、
此処にクソウサギは居ねぇか。」
「神田、まだ捕まえてないんですか?
君も大概馬鹿ですね。」
「あ゛ぁ??
まずはモヤシを刻んでも良いんだぜ?」
『あ、神田!!
あっちにラビが!!』
アレンくんと火花が散るような睨み合いをしていた神田だったが、“ラビ”と聞けば盛大に舌打ちを残して、走り去って行った。
教えたのは、勿論、
逆方向。
「ナイスです、first。」
『お褒めにあずかり、
光栄です。
して、アレンくん。
結局お話って何だったの?』
「ああ、忘れてました。
いやね、
明日此処に転校生が来るんですけど。
その彼がこれまた面白いんですよ!!!!
ま、詳しくは明日のお楽しみってことで……」
ニヤニヤと笑うアレンくん。
これは面白いに違いない!!
明日はカメラ持参だな…
そう心に決めた丁度その時、校内の何処かでウサギの断末魔が聞こえたのだった。
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