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002

俺たちは暗闇に紛れ、理事長室に忍び込む。机や棚、隠し扉などを丁寧に物色する。出来るだけ綺麗なままにするのが秘訣だ。ターゲットに発見されるのを遅らせるのが目的。だったはずなんだが……。俺は大きくため息を吐くと、部屋の隅で縛られているデカイ生徒を見やった。

夜遅くまで残っていて、理事長室から聞こえてくる物音に気づいて、ここまで様子を見にきたらしい生徒会長。負けん気が強いらしく、縛られた今もギラギラとした闘志は絶やさない。さすがーーあのクライエントの息子だ。生徒会長をしているだけの事はある。

「くそっ……」
「ガキ、じっとしとけ」
「あんたら一体何者なんだ?」

会長は、悔しそうに俺を睨みつけながら問いかける。部屋に入って何も出来ずに俺に瞬殺されたのがよほど悔しかったのだろうか。だが俺は、質問に応えてやるほど優しくは無い。俺は適当に無視をすると捜索を再開した。

因みに俺は生徒に紛れてはいるが、立派な成人だ。ちょっと童顔でちょっと背が低いだけだ。正真正銘、成人男性だ。

「……あんたら、この学園の人間じゃねぇな?どうやって入った。従業員は全て俺が把握してるつもりだが、あんたらの顔は見覚えが無い」

会長の言葉に、俺は思わず手を止めた。中々良い頭を持っているらしい。素直に感心した。

「惜しいな。俺たちは部外者であって部外者では無い」
「どういう意味だ?」
「ガキの頭じゃあ考えるのはその程度ってことだ。黙ってろ、仕事の邪魔だ」

感心をしたのは事実だが、仕事の差し障りになるようであってはいけない。普通、見つかったら相手を処分するのだが、ここでそれをすれば会社に関わる。こいつがクライエントの息子であるのも叱り、この学園内には俺らを喜んで使ってくれるお得意様の子息がわんさかいる。だから、今回は一切傷をつけてはいけないと釘を刺されている。生憎、睡眠薬は使い切ってしまったから、こうやって黙らせておくしかないのだ。

それにしても面倒くさい。これだけの膨大な資料の中から目的のものを探すには、いかんせん時間がかかりすぎる。日が明けてしまう。まあ、そうなってもまた来ればいいだけの話。ただ二度手間になるのが面倒っていうだけ。時間を気にしながら、やけに静かになった室内で黙々と作業に集中する。

俺と相棒は紙ベース資料を、変態を中心とした3人は、コンピュータベースの資料をあたっている。見るのにいちいちパスを破る必要があるから、人数を多めに設定している。

そうやって、各自ひたすら確認作業に没頭していた時だった。

「デルタ、レベル1、2ゲット。残るはペーパーです」
「了解。I(アイ)とD(ディ)、オタクはペーパーに移れ」

どうやら目的のデータは見つかったようだ。やはり、コンピュータベースの方が、今の時代扱いは楽だ。思いながら、俺は仲間に指示を出した。……オタクはコードネームでは決して呼ばない。これは、俺の中で最も大切なルールだ。

「「「ラジャー」」……ちょっとなんでいっつも俺だけオタクなんですか、普通にK(ケー)って読んでくれればいいのに」
「……お前、俺がそう呼んだら何する?」
「え、そりゃあデルタを襲ってにゃんーーゴブァッ」
「死にさらせ虫螻」
「デルタ、遊びはほどほどに」
「これが遊びに見えるか?俺はどうやったらこのバカの頭をかち割れるかいつも考えてる、これは死活問題だ」
「…………」
「おい、I、サボるな手を動かせ」
「理不尽ですーーあ、見つけました」

時折冗談を交わしながら、俺たちは手分けをして作業に没頭する。あと少し。これで、二年にも渡る任務が完遂される。俺は、オタクを会長と同じように縛り上げて放置すると、処理スピードを上げた。






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