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世間面した醜い狼の真実の皮が剥がれようとしています


「悪いが、今日で生徒会補佐を辞めてもらう」
「……え、な、なんで急にそんなことっ!」

男前と面と向かって話すのは疲れるなあ、だなんて現実逃避をしてしまうくらいには、俺は衝撃を受けているようだ。わざわざ目立つような変装をして、気に入られそうな御託を並べて、補佐の任に就いて、バカどもの相手をする。これは俺にとって大変な苦痛だったが、俺は血反吐吐いても辞める訳にはいかなかったのだ、何と言っても、俺の仕事に支障がでるからだ。

……今まで、何のために暑っ苦しいカツラにメガネかけて、聞き分けの無い、一番嫌いなタイプの王道とやらを熱演してきたと思ってるんだこのクソガキがーー!今までの俺の苦労を無にする気か!

だなんていう爆発しそうな怒りを押しとどめ、俺はただ演じながら懇願する。一度受けたものは最後までやり通したい、と。

だが、今俺の目の前に居る、平凡兼俺の親友(そんな気は毛頭無いが)の肩を抱く会長曰く、

「俺らは勘違いをしていた……俺らに必よーー」

長いので省略!つまりこのバ会長が言いたいのは、生徒会は皆この平凡に乗り換えたからお前すっこんでろと、そういうわけだった。

こいつら後でぶち殺す。
だが、付きまとわれセクハラ三昧だった毎日から解放されるのは素直に嬉しい。その反面、これからの任務が一層面倒臭くなる。それだけが気がかりだ。

俺の任務は、この学園理事長の不正を暴き、学園を再建することだ。これは、とあるやんごとなき方からの依頼で、我が社の腕が試されている。成功すれば、会社のスポンサー契約を結んでくれるという話になっていて、そんな、社運をかけた重要任務を、俺率いる精鋭部隊が請負った。だから絶対に、失敗出来ない。

そんな俺に、このバカげた潜入作戦を持ち出してきたのは、部内一のハッカー兼、変態オタクだ。ヤツ曰く、この作戦ならば、最短時間で理事長に近いポストに就けると。他に適したものも無かったため、俺はヤツの案を採用したわけだが……。結果は見ての通り、半分成功、半分失敗。生徒会や風紀連中に気に入られ、数ヶ月後には生徒会補佐の地位を得た。まだまだ、ターゲットである理事長に接触する機会は少ないが、他の一般生徒よりかはまだ可能性があったはずだった……。今となっては過去になってしまうのだろうが。俺はさも気落ちしたかのような演技をしてみたが、話しかけてくる生徒はいない。些か作戦が短絡的すぎたのだろうか。責任はあのオタクになすりつけてやる。

俺は少しだけ反省して、今後を考え始めた。まさか、チームに裏切り者はいないとは思うが、この状況を鑑みると、理事長が何か勘付いた可能性もある。この平凡が理事長側の人間である場合も想定出来る。
しばらく考えてみて、俺の脳内にはもうこの作戦しか思いつかなかった。ここまできてしまった今、強行突破をさせて貰おうと思う。

「もう、俺に話しかけないで」

少し低くて暗い声で、言いながら俯いてみせれば、連中は案の定動揺しやがった。俺はゆっくりと振り返ると、のんびりとした調子で生徒会室を出た。扉をしっかり閉めた所で、俺は立ち止まる。この部屋の上が、理事長室だ。上を仰ぎ見た後。俺は変態オタクを含むメンバーに指示をだした。

『今日中にやるぞ。各自、やる事完遂させとけよ。失敗は則ち任務の失敗を意味する。死ぬ気でやれ』

総勢5人で今夜、俺たちは作戦を決行する。






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