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「ようちび介。テメェ何やらかしてんだよ」

大きな音をたてて再び扉が開いたと思えば、そこには堂々とした佇まいの男が立っていた。呆れたようにため息を吐く。アシンメトリーに銀のメッシュが散る髪、耳にはいくつものピアスにカフスが散らばっている。その姿はまさに――

「……不良だ」
「あ゛あ゛!?テメェ、相変わらずだな」
「……不良うるさい」
「……んだと?上等だこの野郎」

教師も俊介もビックリなやりとりの後、不良こと皐月蒼矢(サツキ ソウヤ)は大股で沙夜に近付く。だが、沙夜はそろそろと後ろに下がり、皐月から逃げた。

「てめっ、いっつも逃げんなっつってんだろ。じゃじゃ馬かっての」
「……じゃじゃ馬じゃないし。……不良のめはふしあなか」
「なんかむかつく……」

フェンスを乗り越えながら皐月が呟けば、沙夜は不服そうに応えた。

彼らのやりとりからお分かりだろうが、皐月と沙夜は顔見知りだ。謂わば、サボり仲間と言ったところだろうか。

俊介が沙夜に必要以上の心配をしなくなって以降、沙夜は屋上で授業などをサボるようになった。そうして、時々屋上に訪れるようになった沙夜と皐月は出会った。沙夜は人間に対する警戒心は強く、なかなか口を開こうとはしない。その反面、口を開けば案外毒舌だったりする。皐月は、何をしても喋らずビビリもしない沙夜に興味を持ち、構い始めた。ただ、沙夜は他人に近付かれるのは嫌いで、5メートル以内に近付けば無言で逃げるし、無理に近付こうとすれば震え続ける。結局、皐月が妥協し、いくらか離れた位置で二人はのんびりと過ごす事に収まった。こうして皐月が沙夜に話しかけるうちに二人はある程度打ち解け、今のような関係に落ち着いたのである。

「待て、っつってんだろ!?」
「……え、やだ」

フェンスを越えた位置、断崖スレスレの所で、二人はじりじりと追いかけ合っている。教師も俊介も、ただそれを見ている事しか出来なかった。
そんな時だ。


「あ」
「!ばっ、かやろう!」
「さやっ!」

はっとしたような声と共に、沙夜の身体が空中に投げ出されるように傾く。それにいち早く気付いた皐月は、その場でダッシュした。俊介の焦ったような声が辺りに響く。






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