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大昔、二人は偶然にも出会ってしまった。
片や魔族たちの頭取として期待を寄せられた人形の魔族。片や1000年に一度、人間の中にたった一人だけ生まれると言われる神の使い。双方、貴重な存在だった。永い間、魔族と人間は憎しみ合い、互いに虐殺を繰り返していた。

そんな時代に生まれた二人は、互いが何者であるかも分からずに、出会ったその時から惹かれ合っていた。だが、それを知った双方は二人を引き離すべく画策する。しかし、強大な魔力を有する彼等の前に、引き離す術はなかった。

互いの存在が何なのかを知りなぜ反対されるのかを知った彼等は、それぞれの領域からの逃亡を謀った。逃げてから最初の内は、双方は愛し合い、何の問題もなかった。しかし、違う価値観を持つ者どうし、擦れ違いが生まれた。

魔王は殺しと人間の血を好んだ。魔術師は虐殺を嫌い平和を好んだ。擦れ違いは徐々に溝を深め、遂には互いの領土さえも巻き込む喧嘩に発展した。嬉々として人間を殺してゆく魔王に、魔術師は呪をかけ、封印した。

しかし、愛すべき彼人に呪をかけてしまった自分が、許せなかった。彼もまた、自身に呪をかけた。彼が目覚めるその時まで眠り、記憶を全て捨てた。戒めの意味を込めて。

その後、彼等は永い時を、呪をかけ直しながら繰り返してきた。魔王は幾度もそれを止めようとしたが、魔術師は殺戮を許さない。魔王が殺戮を止めるまで、魔術師は繰り返し続けるつもりでいた――。

「200年に1度ずつしか会瀬の無い上、お前はいつも私を覚えていないのだ。寂しいにきまっとろう……抱かせろ」
「……頭は冷めたのか」
「無論だ。現に、そこの畜生共を殺してはいない」
「…………よいだろう。やっとか」

唖然と立ち尽くす勇者達を後目に、二人はそっと身を寄せ合い、愛しむように互いの頬に手を添えた。実に数百年ぶりの触れ合いだった。

「お前がいればもう何も要らん」

魔王の言葉に、魔術師はクスリと呆れたような笑みを溢した。


END



お題:
透撤
テーマ:
とりあえず封印と忘却のループ。世界を巻き込む痴話喧嘩。






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