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02


――昔からそうだった。
サイとイズミは幼なじみで親友。いつでも、一緒に過ごしていた。例えお互いに恋人が出来ても、クラスがバラバラになっても、時間があればいつも一緒だった。
それが当然だと、サイは考えていたし、まさかそれだけで自分に理不尽な嫉妬や虐めがふりかかるなんて、小さな頃は全く想像もしていなかった。

『アンタが一緒にいるだけで彼の美しさが損われるの』
『とっとと離れな』
『イズミくんが迷惑してるんだって!』

かけられた言葉に、悪意が含まれているのは分かっていた。時々暴力を奮われる事もあったが、護身術を身に付ける事で段々と受け流せるようになっていった。

それでも、たまにヘマをして、痣をつくる時がある。そういう時、サイが隠そうとしてもイズミは目敏く気付く。眉をハの字にして怪我の手当をしてくれるイズミ。サイはその顔を見ると、どうしようもなく悲しくなる。強くならなくてはと、いつも思うのだ。

夢の中では、小さい頃から現在に至るまで、サイが受けてきた虐めと暴力の映像が、繰り返し再生される。この宮殿に来てからというもの、サイはこの夢を繰り返し見てきた。これは夢だと、何度見てもサイにはそれが判っていたけれど、何度経験しても心の奥底がズキリと痛むのだ。

もう嫌だと、イズミの傍に居たいと、心の底から思えば、意識は自然と浮上する。いつもそうだった。そしてこの日も、いつも通りだと、意識を浮上させると。微かに自分を呼ぶ声が聞こえた。

『   』

知っている、だけど思い出せない。イズミのものではない、低音の心地好い声。懐かしさを、覚えた。



「サイ?起きたの?」

ゆっくり瞼を開ける様子に真っ先に気付いたイズミは、顔を覗き込みながらにこやかに声をかけた。が、イズミは逸早くその異変に気がついた。

「サイ……?」

目は開いているのに、焦点が定まっていない。表情も、いつもとは違った虚ろなもので、イズミは焦燥感を覚えた。その時。

「よんでる……」

サイが、虚ろなままに立ち上がると、両手を天井に向かって突きだした。そこでようやくその異変に気付いたらしい彼らは、サイから目を離さずに周囲を警戒する。驚くイズミは、そんな突飛な行動に反応できず、サイの身体から手を離してしまう。
だが、その次の瞬間、魔導師が叫んだ。

「来るぞ!?」

叫ぶが早いか、突然天井にブラックホールのような穴が開いた。






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