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17.果報は寝て待て*



 眠くて眠くて仕方ない。けれども、一度火の灯ってしまった昂りを冷ますまでは、眠りに落ちる事もままならないだろう。じわじわと炙られているかのような感覚に、ジョシュアは堪らずに悶えていた。

 未だに口のナカで蠢くイライアスの指は、時たまジョシュアの舌を指で挟んで遊ぶ。その度にイライアスの口が降ってきて、引き出されたジョシュアの舌を噛んだり吸い上げたり、奥の方を舐め上げてきたり。本当に食べられてしまうのではないかと、ジョシュアは冗談混じりにそんな事を思った。
 そうやって遊ばれ過ぎると、段々と舌の感覚がおかしくなってきてしまって、時々自分で舌を動かして感覚を確かめたりなどした。すると、舌を押さえ付けているイライアスの指を逆に強く意識してしまって、舌を動かすたびに擦れて余計にいやらしい事をしている気分になる。
 まるで、自分からその指に擦り付けているかのような。錯覚には違いないのだけれども、まるで自分がこの男の女にされてしまったような気分になって、彼は酷く混乱した。
 溜まった唾液を呑み下すたび、口の端から唾液が更に垂れるのが分かった。最早抵抗する気力もない。
 そうやって、口が溶けてしまうんではないかと思える程に何度も唇を合わせていた所で。またしても、イライアスが動き出した。

「ッ!」

 何度目かの口付けを交わす間、イライアスの左手はジョシュアの口内から抜き取られ、そうしてその手がジョシュアの下服の中へと侵入してきたのだ。口付けですっかり油断してしまっていた。咄嗟に、止めるようにその腕を掴むも、力では到底敵わない。まるでその手に縋るような有様だが、ジョシュアは気付かない。
 戸惑いもなく慣れたように、ジョシュア自身に直接触れてきたイライアスの手に、思わず腰が震えた。

「ん、んんーーッ!」

 ゆるゆると勃ち上がりかけていた己の分身に触れたイライアスの手は、ジョシュアの唾液でしどしどにに濡れていた。
 それだけではない。先程の口淫の際、一瞬なりともうっかり高められてしまったジョシュアは、先走りと共に精液も僅かながら出してしまっていたのだ。
 最早自分でも気持ちの悪いほどに濡れそぼっていたジョシュアのものは、イライアスの手の滑りと相まって、擦られるたび、驚くほどに気持ちが良くなってしまった。
 しかも自分ではない、自分よりも大きな他人の手に触られていたのも大きいのかもしれない。羞恥心と、同性にこんな事をされているという背徳感とが、ジョシュアの興奮を一層煽った。自分から求めるようになるまではそう、時間はかからなかった。

「あ、はあッ…………んん、」

 その行為を止める為にイライアスの左腕にしがみ付いていたはずのジョシュアの手はいっそ、イライアスの腕ごと強く抱き込んで、引き寄せてしまってすらいる。イライアスの手の動きに合わせるようにジョシュアの腰は微かに揺れていて、その様はまるで自分から擦り付けているかのようだ。
 そんな行為も、頭が馬鹿になってしまっているからこそ出来るものであって、その度にイライアスがフフッと笑みを浮かべるのすら、ジョシュアは気付けなかった。
 ただ、イライアスが笑う度、顔やら口の中やらにイライアスの余裕のない吐息が吹きかかるので、その度にジョシュアは背筋を震わす事になった。熱に浮かされたように火照った身体は、信じられない程敏感になっていた。そこからジョシュアが、絶頂に昇り詰めるまではそう時間もかからなかった。

「ん、んん、あ、だめだッ、出る、放しーー」
「は、…………一回、イッちゃいなね」

 耳元で低く、吐息と共にその声で囁かれてもう、ジョシュアはダメだった。

「んっ、うんんんーーーーッ!」

 仰け反りながらビクビクと腰を震わせ、イライアスの手に擦り付けるように吐き出してしまう。未だ嘗て感じた事のない程、気持ちの良い絶頂だった。
 背徳感と羞恥心と理性を訴える声が全部混ぜこぜになって、何もかもがどうでも好い。
 羞恥心などもすっかり忘れて、その手のナカに何度か擦り付けるように吐き出し切ってしまって。その余韻ですら、背筋がゾクゾクとして気持ちが良い。
 口をだらし無く開けて、息を吐き空気を取り込む。ばくばくと鳴る己の心音が、やけに大きく聞こえていた。

「はぁーー、ん、イッちゃったねぇ……気持ち良かった?」

 だがそんな中でもイライアスはいつも通りで。耳元で甘えるようにそんな事を囁かれて、ジョシュアはまたしても微かに背筋を震わせた。
 絶頂の余韻に浸りつつ、そこでようやく全身から力を抜いく。すっかり汚れてしまっている服の事やら目の前のイライアスの事をすら考える余裕もなく、しばらく微睡んでいた。
 だがジョシュアは忘れている。こんな所でイライアスが止まるはずもないという事を。そして今、自分は彼に襲われている最中だという事を。
 その時突然、ジョシュアは己の下肢が空気に晒されたのが分かった。一体何だ、と回らぬ頭を必死に動かしながら顔を上げると、ジョシュアから奪い取った下服を投げ捨てるイライアスの目と視線が絡み合う。
 その時のイライアスの目は、ギラギラとした獲物を狙う時の雄の目をしていた。そこでようやく気付く。今、実はとんでもない貞操の危機なんではなかろうかと。だがもう遅い。
 そこですっかり眠気も覚めてしまったジョシュアが、慌てて静止の声を上げるも、イライアスは聞く素振りも見せなかった。

「ちょ、待ったーー」
「んんー、悪いけど、俺を散々煽って、焦らしておいて、待つなんて、俺はそんなに枯れちゃいないんだからねぇ」

 そんな言葉を言い放つと同時に、何とイライアスは何と。パタパタと暴れ出そうとするジョシュアの、目の前にあった性器をそこで、ぱっくりと口に含んでしまったのだった。

「ッんあーーーー!」

 驚きと衝撃とで、思わず声を上げてしまう。そのまま、先程出したものを吸い出すように大きくじゅるりと啜られ、緩く芯を残したままだったジョシュアのものは、あっという間に硬さを取り戻してしまった。
 そのままぐいと奥の方まで咥え込まれ、舌やら口内やらでゆるゆると擦られる。時々先端を弄られながら唾液と共に啜られると、強い快楽に思わず腰が引けた。
 的確過ぎる口淫に、ジョシュアはただ喘ぎ声を漏らすだけだった。それ程に、イライアスの刺激はヨかったのだ。
 そんな、与えられる強すぎる快感に悶える中で、突如、ジョシュアは気付いてしまった。己が悶えている快感は、何も性器への刺激からくるものだけではないという事に。

「え、あ、ああッ!」

 鋭い快楽の中に紛れ、腹の中に違和感があった。性器の奥の窄まりが、どうしてだか引き攣れているように感じるのだ。
 いやさ、どうしてかなんて、今思い浮かぶ原因なぞ一つしか考えられないのだが、ジョシュアはてんで認めたくはない。それと同時に腹の中の方からじわじわと湧き上がってくる何か。下腹部を自分の目で確認する気も起きず、ジョシュアは悶え荒い息を吐き出す。
 腹の奥に感じる原因については考えたくもない事だったが、どうしてだか微かにジョシュアは思うのだ。赤毛のイライアスがそうさせているのであれば、それはそれで仕方のないのでは、と。
 全くもって、今日の自分は頭がどうかしてしまっている。赤毛に真名を教えてしまったり、そのままこんな行為をみすみす許してしまっているなんて。疲れ切って碌に頭も動かぬ中、ジョシュアは震えながらぜぇぜぇと息を漏らした。

 その時点でジョシュアの気力はもう、限界に近かった。快楽と、ふわふわとした頭の中が絡み合ってごちゃまぜに、なるーーーー



 昂ぶって張り詰めている自分自身にも時折手を伸ばしながら、イライアスは夢中でジョシュアのものにしゃぶりついていた。普段、男相手にここまでの事はしないはずなのだけれども。
 この時イライアスは、この男が何かを言って止めてくる前に、何故だか先にこの手の中に収めてしまいたかったのだ。静止や拒絶の声かかかれば、イライアスも流石に止めざるを得ない。嫌われたくはない。
 だから、ジョシュアが何も分からぬ内に、先に既成事実でも作ってしまえと、よく分からない衝動と焦燥にイライアスは自分自身でも不思議に思ってしまう。
 何故、自分はこんなにも焦っているのか。もうじきジョシュアが自分の手元から離れて行ってしまう事が分かっているからだろうか。それとも、またとない都合の良い下僕が現れて手放したくないからだろうか。
 じゅるじゅるといやらしい音を立てて目の前の男を喘がせながら、そんな事をつらつら考える。けれどここで、結論は出なかった。
 きっと自分はまだ、正気に戻り切っていないのだろう。こんなにも強欲な部分が晒され、無理強いはしないという己のポリシーに反した行いをすら、この場でしようとしているのだから。
 自分はもうとっくに頭がおかしくなっているのだ。そうやって自分を無理矢理納得させ、そして自覚しながらも、イライアスは行為を止めなかった。こんなにも強い衝動は、初めての事だったから。

 これで3本目になる指を、擦りながらゆっくりと挿し入れていく。性器への愛撫と相まって、随分とナカは柔らかくなっていた。きっとすぐに、もっと大きい自分ですら、すんなりと受け入れてくれる。自分と一緒に、高みにだって昇り詰めてくれる。それは何と、至高な事であろうか。
 いつだってこの男はそうだ。分かっていながら易々と自分を受け入れてしまうから。顔では嫌な顔そうなをしながらも、ちゃんと理解して受け入れてくれる。どんなにダメな自分をも受け入れてくれる。何故だかイライアスにはそう、思えてならなかった。
 震えるその手は、イライアスの頭をくしゃりと掴んで離さず、時折漏れ聞こえる声には紛う事なく快楽が滲んでいる。
 まだ大丈夫。血を飲めば彼はすぐに回復する。何せ相手は吸血鬼だ。遠慮なんていらない。そんな最低な打算をすら内に秘めながら、イライアスは更に自分を昂ぶらせていった。

 そしてとうとう、ジョシュアは限界を迎える。イライアスも、もうそろそろだとは思っていたのだ。ジョシュアのナカも性器も、ひくついて震えが止まらなくなっていたから。
 絶頂が近い事を察して、一層追い詰めるように両方の刺激を強めれば、耐えられないとばかりに声が上がった。切羽詰まった、快楽に浸された甘い嬌声だった。

「ひぐッ、んあ、あぁッ、それ、ダメ、だッ!やあ、あ、ム、リーーーーッ!」

 最後の方は声も出せず吐息のような言葉を口にしながら、何度も大きく身体を震わせ、ジョシュアはイライアスの口のナカで果ててしまった。
 その時、イライアスの口内へと吐き出された精液は何故だか少なくて、そして指で弄られたナカは先程からうねって震えて指を強く締め付けている。
 戸惑う事もなく口内に吐き出されたそれをゴクリと飲み下し、可哀想なほどに震えるジョシュアを視姦しながらイライアスは思う。もしや今、腹の方でも彼は同時にイッたのではなかろうか、と。
 それはそれは、何とも興奮する材料ではないか。と、イライアスはニヤリといやらしくも妖艶な笑みを浮かべたのだった。

 だが、大変残念な事に、そんなイライアスの余裕はそう長くは続かなかった。
 イライアスが口を拭いながら上半身を起こし、ジョシュアの痴態を眺めていたその目の前で。ジョシュアは一通りビクビクと身体を震わせたかと思うと。突然、全身からフッと力を抜き、後ろに沈み込んでしまった。それっきり、身動ぎする気配もなく、ジョシュアは気絶してしまったのか、その場でパッタリと動かなくなってしまったのだった。

「あ、あえ?」

 昂ぶった己を出したまま、素っ頓狂な声でイライアスが呟く。これから、という時にコレとは信じ難くて、イライアスはしばらくジョシュアの頬をぱしぱしと叩いて確認した。
 赤らんだ頬と、開けっ放しの口から垂れた唾液がやけに艶かしい。けれどもそれから、ジョシュアが起きる気配は一向になくって。イライアスはそこで己の失敗を悟る。
 本日のイライアスの教訓。
 果報は寝て待て、急いては事を仕損じる、である。

「最っ悪……、何コレ、俺ほとんどイッてないんだけどどうしてくれんのッ」

 未だ天を仰ぐようにそそり勃った己の分身を、哀しそうに見詰めた後で。イライアスはヤケクソ混じりに呟く。

「どうせ俺が片付けんだから、ぶっ掛けても問題ないよね!」

 半泣きになりながらも虚しく処理を済ませてから。イライアスは渋々、己が仕出かしたコトの後始末を始めるのだった。







* * *







 少しばかりスッキリとした頭で目を覚ましたジョシュアは、ぼんやりとした頭でキョロキョロと辺りを見渡した。珍しく赤毛の気配がしないので、隠れて何かやらかすつもりではないかと少し警戒した。けれどもどうやら、本当にこの部屋にはいないようで、ジョシュアはほっと息を吐く。
 そして、いつものようにえいっと身体を起こし、ベッドから立ち上がる。するとここで、ジョシュアは違和感に首を傾げる。何故だか、下肢がスースーとするのだ。
 おかしい、いつもと同じ服に着替えた気がするのだが、と見下ろし己の服装を確認する。するとそこには、とても見覚えのある、けれども自分のものではない半袖の上服を身にまとう自分の姿が目に入った。
 目にした途端、ジョシュアは固まった。何せ、着ている明らかにサイズの合っていない服は、どう見ても赤毛のイライアスのもので。
 しかも、下は何も纏っていない。下着ですらもだ。下服を何も着ていないのである。今、己が着用しているのはたったの一枚、尻が隠れる程に大きなシャツだけ。ジョシュアはそれだけを身に纏っている。
 そこでジョシュアはハッとして、同時にサァーッと血の気が引くような感覚を覚える事になった。ここでようやく、昨日だか今日の朝だかに起こった出来事の一部始終を思い出してしまったのだ。
 途端、頭を両手で抱え天井を仰ぎ見る。頭に浮かんだあまりに生々しい出来事の数々に、この場で叫び出してしまいたい気分だった。

 あの時。薄暗い、灯りすら灯らぬ中でもイライアスの表情はハッキリと見えていて、それは女性が見たら忽ち孕みそうな程にイヤらしいものだった。普段の変態的でおちゃらけた雰囲気とは違い、確実に雌をオとしにかかるような低めのボイスが、男でもドキドキしてしまう程、やけに色っぽかった。
『んんー、悪いけど、俺を散々煽って、焦らしておいて、待つなんて、俺はそんなに枯れちゃいないからねぇ』
 余りに気持ち良くて、そして余りに意識が朦朧としていたので、途中からの記憶がない。一体、自分は何処までされてしまったのか。
 妙な焦燥感に焦れて、咄嗟に服の上から己の腹に手を当てて考えてみる。考えてみれば、尻の奥に違和感がある気がする。いや待て、けれどもあらぬ所の痛みとらやは全く感じられないし、妙にスッキリとした頭は満足するまで精を吐き出したからだと考えれば辻褄は合う。突っ込む所まではイッていないのではないか?そう思うと、少しだけ落ち着いた。
 何せあのエロ魔人に襲われたのだ、己の羞恥心の犠牲のみで済んだ事が幸いだったと納得しようではないか、と。
 ジョシュアは引き攣る顔はそのままに、しかし自分を何とか納得させようとグルグル考え続けるのだった。
 そんな時だった。突然、背後に気配を感じた。

「あれ、起きたんだぁ?スッキリした?」

 ビクリと肩を震わせた後で。ギギギ、とジョシュアが音がしそうなぎこちなさで背後を振り返ると、そこには大変爽やかな笑みを浮かべたイライアスが立っていたのだった。

「あ、ああ……」

 いつものような曖昧な返事をして、ジョシュアは何もなかったかのように振る舞おうとした。だがしかし、イライアスはそれを許そうとはしなかった。背後から抱き込むようにたちまちジョシュアを拘束すると、その左の耳元に顔を近付けて、囁くように言う。

「ね、君は何処まで覚えてるのかな?昨日の事」
「ッ!」

 イライアスはそう囁いた。ジョシュアは思わず息を詰めてしまう。しかし、この動揺がバレないように平静を装って、彼は誤魔化すようにイライアスに語り掛ける。

「ッこの、服、アンタが着せたのか?」
「え?あ、うん。汚したし何処探せば良いか分かんなかったから」
「……着せるなら、ちゃんと下服も着させてくれ」
「えー……だって、どうせ着せてもずり落ちて来るでしょ、俺と君の体格差的に」
「まぁ、それは確かに……」
「それにーー」

 言いながらイライアスは突然、ジョシュアの着ていた上服を胸元までペロリと捲り上げたかと思うと、恥ずかしげも無くいけしゃあしゃあと言ってのけた。止める暇もなかった。

「ほら、眺めよぉーし」
「ッこのーー! お前、イライアス!」

 慌てて上服をずり下げて、同時にイライアスから逃れて距離を取る。咎めるように名前を呼べば、イライアスはヘラヘラと笑うばかりだった。

「あっは、どうしたのぉジョシュア? 男同士だし別にいいでしょ?」
「それは、自分の胸に手を当ててよく考えてから言ってくれ」
「えー、ひっどーい。昨日さぁ、結構大変だったんだよ? 君途中で気絶しちゃうし」
「ッ、仕方ないだろ、戦闘で疲れてた上にアンタに結構な量の血を吸われたんだから!」
「うんうん、って事は、昨日のちゃんと覚えてるんだね?」
「!」

 相変わらず抜け目のないイライアスに、ジョシュアは語るに落ちる。
 そこで突然、ガラリと雰囲気を変えたイライアスが、ジョシュアをジッと見ながら徐々に距離を詰めていく。

「いやさぁ、ホント俺、昨日のアレで結局挿れる事もイく事も出来なかったからちょっと欲求不満気味でねぇ?」
「…………」

 ジリジリと逃げるように後ずさるジョシュアを、イライアスは追い詰めるようにゆっくりと近付いていく。間も無く、ジョシュアの背中にトン、と壁が当たり逃げ場が無くなる。
 それでもジョシュアは、俯いたまま顔を上げる事が出来ない。いつものように誤魔化そうと、頭の中で何とか回避できる話題を探す。
 今までにそれで成功した試しは無かったが、最早それはジョシュアの癖のようなものだった。それが悪いかどうかはさて置き、逃げて逃げて、どこまでも逃げ続けるのである。
 そんなジョシュアの思考を知ってか知らずか、イライアスはそんな彼の逃げ道を塞いだ。物理的にも、そして精神的にも。何せそれは、イライアスの得意分野なのだから。
 目の前にイライアスの影がかかり、ジョシュア越しに壁に両手をつく。

「覚えてる? 後ろのアナ広げてたら、ジョシュアがブッ飛んじゃったの。アレってさぁ、あん時もしかして……、ナカでイッた?」

 少しばかり屈みながら、イライアスはジョシュアの耳元でボソリと告げた。





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