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昔々ある所に、黒い魔法使いがおりました。
とても強くて優しい魔法使いは、しかしいつも独りぼっちでした。
誰もが、彼を怖がって近寄ろうとしません。
『魔王め、あっちへ行け!』

それでも人々と一緒に居たかった黒い魔法使いは、諦めずに通います。
それでも、とてもとても寂しくて、彼は1日の殆どを森の中で、どうぶつ達と共に過ごしておりました。

そんなある日、王様が黒い魔法使いに言いました。
黒い塔の天辺で暮らしなさいと、そうすれば皆安心して、彼を恐れる事もなくなる、黒い魔法使いを恐れる者も居なくなると。

優しい黒い魔法使いは、皆が幸せに、自分を怖がらなくなるのなら、と塔で暮らす事にしました。
しかし、塔へ入ったきり、黒い魔法使いは外へと出られなくなってしまいました。
王様は、黒い魔法使いを騙して閉じ込めてしまったのです。
それでも、黒い魔法使いは毎日誰かが会いに行くよ、そう言った王様の言葉を信じていました。
しかし、何年経っても何十年経っても、誰一人、彼を訪ねる人は居りませんでした。

段々と、遣いのひとたちが食事を運ぶ回数も減り、やがて誰も塔を訪れることもなくなってしまいました。
黒い魔法使いは、独りぼっちで何年も、何十年も、何百年も嘆き哀しみ、しかし希望を捨てられず死ぬ事も出来ずに、誰かの訪れを待ち続けておりました。

彼の哀しみと嘆きは驚く事に、黒い靄となって塔中を覆うようになってしまいました。
人々はより一層、黒い靄に覆われたその塔を恐れるようになりました。

そんな時、塔に、一人の青年が訪れましたーー

これは、そこから始まる永い永い、魔法使い達の物語ーーーー





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