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09



じわりじわりと追い詰められるような熱が全身を覆ってゆく。少しづつ奪われていく思考に焦りを感じながらも、しかし現状を甘受してしまうのは多分、僕が与えられる快楽に弱いから。それと、他人に求められる事に喜びを感じているからなのだろうか。
こんな気分のせいか、何でも許せてしまいそうな自分が怖い。

「っ!くすぐったいから!」
「童貞で処女って、何か興奮すんな」
「っも、ほんと口閉じてなよ!」
「喘いでるの聞いてもらいたいのか?」
「!っばか」

経験の差っていうのは、こういう時に出てしまうものらしい。ズボンを剥かれ下着を剥かれ、上のタンクトップも捲られて。しかしそれを恥ずかしく思う暇もなく、僕は弄られていた。

ドロドロになった性器をじっくりと焦らすように握られて、上半身を好きなように舐められている。胸を集中的に吸われているのは、多分気の所為ではないだろう。開発すれば男でもイケる位にはなると聞くが……そんな事態ににならないのを祈りたい気分だ。

意図的にじっくりと触られているのはひどく焦れったい。気持ち良いのかそうでもないのか。それが分からないくらいにジワジワと膨らんでくる気分に、頭が混乱してくる。レイジがずっと胸を嬲って吸っているのは、多分意識しての事なんだろう。何と言えば良いのか……彼は良く心得ている。焦らすような動きに感覚がしびれてきて、いつの間にかもっと直接的な刺激が欲しくなってくる。意識して衝動を抑えなければ、きっと僕はみっともなく強請ってしまっていたかもしれない。もっと、ちゃんとーー……。そんな恥ずかしい事、言えるわけが無い。僕は自分の手を噛みながら、その焦ったさに必死で耐えていた。

「んっ」

大丈夫、僕はちゃんと我慢できる、だって今までだって散々我慢を重ねてきたし、こんな事態だって夢にも思わなくて、そもそもシノとこうなりたいだなんて考えてもみなくて、こうやって身体を重ねるとか、舐められるとか、セックスするとか、全然考えてもいなくてーー、ただただ、隣に居たかったのだ。僕がシノとそうなれるなんて、到底考えられなかったから。敢えて、考えないようにしていた。

「ひゅっーー、ふ!」
「何考えてんだ?」

本当は多分、シノに触りたかったんだ。でも、親友ってそう人前でベタベタ触るような関係でもない、シノに言い寄る連中と一緒にされるなんて、死んでも御免だった。だから僕は、敢えてシノに触らないし、親友として相応しい位置に居座り続けた。それがどんなに、もどかしくとも。辛くとも。

「口開けろ。血ぃ出るぞ」
「んむ」

レイジはそう言って僕の腕を掴むと、口に押し込んでいた拳を取りあげてしまった。それに文句を言う隙すら与えてもらえず、レイジは自分の口で僕のそれを塞いできた。見た目に似合わない優しい動作で、ゆっくりと吸われる。じわりじわりと焦らすように。まるで何かを狙っているように思えて、僕は段々と追い詰められてゆく。責め苦から逃れるように動けば、レイジはお見通しとばかりに妨害する。喰まれて舐られて、そしてまた吸われて、背筋から腹の底からぞくりと何かが湧き上がってくる。
ひどい。
これはひどい。
僕は、到底耐えられそうにない。もっと、と舐る舌を追いかけるようになるまで、そう長くはかからなかった。

「上手上手……」

そうからかってくるレイジは容赦がない。緩急をつけて上も下も攻めてくるものだから僕はもう、理性なんてあってないようなモノだった。人も動物、快楽に弱いだなんて笑っちゃう。

「んっ……は、」
「ゆっくり擦り合わせてみろよ、その方がヨくなれる」

言われるがまま、焦れるほどの動きで舌と舌を擦る。互いの温度を感じながら、息をする事すら忘れて。頭が痺れていくような感覚に襲われながら、あり得ない位、興奮してしまう。思考が麻痺していく。

「っさ、すが……アンタこっちも優等生かよ。ーー止まんなくても悪く思うなよ」
「へんたい」
「……どっちが?アレだけでここまで勃ってんじゃねぇの?
ーーーー変態」
「……ばか」

羞恥に駆られた僕がそう言うなり、レイジは突然行動を開始した。先ほどからレイジにゆらゆらと刺激されていた僕のモノを、見せ付けるように、ニヤリと笑いながら、レイジは咥えた。本当に突然の事で、僕はひゅっと息を呑んで下腹部を襲う言い表せないような刺激に悶える。最初はじわりと、全体を舐るようにゆっくりと。ヌルヌルと擦れる動きの緩やかさに、焦れる。時折襲う微かな快楽に思わず溜め息が出る。焦れったい。もっと、ちゃんと、してくれないと……ーー。

「レイジ」
「ん?」
「…………いじわる」
「っふ、」
「分かっててやってる」

僕の言葉にレイジはそれこそ嬉しそうにニヤリとして、完全に勃ち上がってしまった僕のモノをべろりと舐め上げた。まるで見せ付けるように。その瞬間のレイジは、何というか……途轍もない色気に包まれていた。

「イきてぇか?」
「…………」
「ちゃんと口で言わねぇとな?」

それっきり、レイジは動きを止めた。咥えてじんわりと舐るのも、べろりと舐めあげるのも、軽く吸い上げるのも全部。何も言えないでいる僕に、レイジは言った。

「どうして欲しい?」

もう一度、聞かれる。答えなんて、決まってるのに。

ここにきて急に、僕は冷静になる事ができた。何でそんな事を言わされなきゃならないのか、さっきから僕には良いとこなしで、なぜか、レイジにリードを許している。こんな事でいいのか。僕にだって、プライドはあるんだ。そう易々とレイジの手にかかるなんて、僕らしくない。らしくない。
だったらそう、答えは僕の納得できる方法でなくちゃーー

「そんな事言って、イきたいのはレイジの方なんじゃないのかなー……だってこんなに、おっきくして」
「お、い何だよっ……」

興奮を抑えながら僕は、レイジのモノを強めに撫でてみる。それによっぽど驚いたのか、ビクッとレイジの身体が跳ねた。してやったり。他人のブツなんて触った事ないけれど、僕はもうほとんどヤケクソだった。

「ほら、実はイきたいのはレイジなんでしょ?」
「っーー!」

服の上からの刺激なんて大して気持ち良くもない。相手をイかせるならそりゃ、直接でないと。僕はブッとんだ頭で、レイジの服を剥いていった。僕だけフルチンだなんてズルい、だから二人ともフルチンでこそフェアなのだ。僕はバカだ。

「っおい!」

息を呑む音を聞きながら、僕は初めて同性のそれを咥えた。戸惑いなんて、ブッとんだ頭には全く感じられなくて
、レイジがやったようにとりあえず舐った。経験なんてない。けど、男には負けられない戦いがあるーー。

唾液を擦りつけるように舐め上げてこれならば気持ち良いだろうなと思い出しつつ口で吸い上げる。レイジの表情をうかがうのも忘れない。悩ましげにほんのりと赤らんだ顔がイヤに色っぽい。クソ、このヤリチンめ。
と、そんな事を思いつつ顎が疲れた僕の気が緩んだ一瞬。その隙を突かれた。

「!」
「ッテメ、この、性悪めーーアンタが悪いんだかんな」
「んんっ!」

さっきまでとまるで違う熱烈なキスは、僕の口まで食べてしまいそうな勢いで、首もガッツリと彼の手に捕まった。もう片方の手はやっぱり僕のモノを責め立てて、そりゃもうあっという間に、直前まで追い上げられて。そして突然、レイジは離れていった。

イキナリの行動に混乱している中で僕が反撃できるはずもなく。あれ、と思った次の瞬間には咥えられて強くねっとりと吸い上げられて程なく、僕はレイジの口の中で絶頂を迎えてしまった。

バカ野郎め。




ーーそれ以降の事は、話したくない……。色々やらされたとか仕返しされたとか、男としてどうなんだとか、思う事もあったけども、やっぱり遊びも大切だよねと、僕はバカな事しか考えられなかった。それくらいの衝撃だったのだ。

ただ、僕の尊厳をかけて言おう。弄られたけども突っ込まれてない。セーフだ。僕は違う。連中とは断じて違う!

それでも、真剣なレイジの顔だとか、汗を滲ませながらもずーっと僕の事を見つめ続けていた事に心臓を鷲掴みにされたようなときめきを感じてしまったのは事実で。……こんな表情を見せるのなんてこの学校では僕だけなのだなと、そんな優越感を感じてしまった僕は最早、自覚せねばならなかった。






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