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我が身は死人の世界です



僕は世界を周り、虱潰しに義務を果たして回った。最中、僕は酷い後悔に押し潰されそうになるけれども、死に際の彼等の微笑みに何とも言えない感情が胸を駆け上がった。きっと僕が義務を果たした事で彼等は穏やかに逝く事が出来たのだろう、そう思う事で僕は僕の安定を図った。彼等の笑みは一体、何を意味していただろうか。確認する事はもちろん敵わない。

こうして、僕は前時代の生き物の世界に終止符を打った。まことしやかに流れる噂で、一族がようやく没した事を知ったのは、僕が旅に出てから約一世紀ほどたった頃の事だった。

ようやく終わった。僕はその事にホッとしながら、次に死に場所を探した。誇りを最後まで忘れなかった一族の最期、たとえ誰も見ていなかったとしても無様にだけは逝きたくはなかった。胸を張って、皆の元へ飛び立てるようにしたかったのだ。

しかし、一世紀もの間戦いに精を出していた僕に敵う者など、国中を探しても居るはずがなかった。元々戦闘民族と言われるほど、闘いに長ける一族だ。僕を上回れるにんげんなど、この国には存在していなかったのだ。国外にさえ出れば、もしかしたら何処かの僻地で僕らのような戦闘狂と呼ばれるような人はいるのかもしれないが……、それは避けたかった。この地で栄えた一族の最期、この地で終わらせたかった。

そうして散々歩き回った後で。僕は頼みの綱とばかりに、かの森へと足を進めた。昼間であるのに、陽の光が届かない仄暗い森。ずっと気になって仕方なかった森へ、僕はとうとうやってきたのだ。この森には人を食らうような恐ろしい化け物も居ると聞く。僕よりも強ければもういっそ人でなくても良い、そう思える程に僕は疲れきっていた。

だが、そうして進んだ森の奥深くで、僕は奇妙な建造物を発見することになった。それは大層大きな塔で、その塔の頂上には真っ黒い雲が蠢いていた。塔の周囲には、とても息苦しくて寒々しい気配が周囲に漂っている。僕は、その気配に誘われるように塔の内部へと入っていった。長い長い階段を登る内に、塔の上部から酷く荒んだ力の気配を感じるようになっていく。そして僕はこの時、この塔の頂上に居る者がこの国の何者よりも強いと確信した。同時に高鳴る胸が、僕に安堵を齎す。

頂上の一室からは、人とは思えない程の力が溢れていた。禍々しくて荒々しくて、強く激しい力。この塔自体が、まるでその者を封じる為だけに造られたもののようで、部屋は頂上の一室しか存在していないようだった。何年も何百年も使われていないような扉は錆び付いていて酷く重く、僕の力を持ってしてもとうとう扉を開ける事は敵わなかった。どうしてもその力の持ち主と対峙したかった僕はそこで、扉を粉々に吹き飛ばすという方法をとった。ありったけの力を込めて、えいやっと扉に穴を開ける。作戦は無事に成功して、僕は待ちに待った局面を迎える事となった。僕はその時、運命と出会った。

「きさま……何者だーー?」

聞こえた声は酷く嗄れて、何年も話をしていない様子が見て取れた。そして、男の気配に誘われるように、僕はゆっくりと口を開いた。

「……僕、はーー」






















































「ーー、……ノルーー、ノルマン!」

その甲高い声に、僕は一気に意識が上昇するのを感じた。ハッとして声の主を見やれば、黒い髪の少年がそこには居た。同時に、彼の酷く心配そうな顔が目に入った。

「……クロード?」
「うん、そうだよ僕だよ。……君、凄く魘されてたよ。嫌な夢でも見た?」
「魘されて……?」
「うん。多分熱があるせいだ。傷の治りも遅いし……」
「そっか……ゴメン、昔の夢を見てたよ」

少しだけ寝ぼけながらそう言えば、彼は眉を下げたままの表情で溜息をつくように息を吐いた。ああそう言えば僕は、先の闘いで怪我を負ったのだった。ふざけ過ぎたツケか、獲物を前に抑えきれなかった衝動が裏目に出たのだ。失敗をした。そのせいで、彼をかなり心配をさせたようだ。僕は少しだけ罪悪感に駆られながら、吐き気を誤魔化すように笑ってみせた。

「悪いだけの夢じゃなかったんだけどねぇ……」

あれは、かつて自分が歩んできた道。後悔ばかりが先に立つが、あの道筋がなければきっと今の自分はないと断言できる。あれがなければ僕は死に場所を求めてあの人と出会う事もなかったし、こうして新たな居場所を創り上げる事も無かっただろう。生きる目的が、約束があるだけで、僕は生きてゆけた。

「ふうん?ああっ、それよりも!大変なんだ、姐さんがね、ノルマンが怪我で倒れたって聞いて、連中シめてくるって飛び出して行っちゃったんだよぅ!僕等じゃ姐さん止められないし……姐さんに何かあったら、」
「えーー!?流石に一人はマズイって、僕もヤられた訳だし……しょうがないなぁ、行ってくるよ」
「ごめんね、具合悪いのに……僕もノルマンみたいにもっと強ければ……」
「クロード、君はそのままでいいんだよ」
「……うん。ノルマン、僕送ってくよ。身体辛いでしょう?一人だけなら、“歩かなくても”転送できるから」
「うん、助かるよ。クロード大好き」
「うん!……後で、帰ってきたら夢の中のクロードの話を聞かせてね、おとーさん」

まだまだ“幼い”彼にその名を問われて、僕は思わずドキリとする。眠る間に、僕はその名を呼んでいたらしい。

彼は、僕が故人の名を彼につけた事を知っているし、その人が僕にとって思い出深い人物である事も、知っている。しかし、その名前に込めたものをまだ知るはずはない。
そのはずだ。

「……ちょっ、色んな意味で僕びっくりだよ」
「僕だって嫉妬するんだからね!浮気はダメよ!」
「あっはは、善処します!じゃ、行って来るねぇ」
「うん、行ってらっしゃい!転送するよ」

今度こそは大切な者を護りきれるように。ずっと胸にしまってきた想いを、仲間達が抱いていた苦しみを忘れないように。いつも心に仲間を、クロードを想いながら僕は今日も足掻いている。帰ったら真剣に話をしなければならないのだろうか、僕は彼の成長を喜ぶと同時に、幾許かの寂しさを覚えたのだった。


E N D






読了感謝します!
結構な割合で抽象的な雰囲気のお話でしたが、いかがでしたでしょうか?分かりにくい内容なのは承知していますが、何卒ご容赦を…。
エロがあんまり納得のいく出来ではないのが心残りです…あんまり書かないせいか描写が不安定でした。今後、練習していきたい←

細かい内容は諸事情によりノーコメントです


【CAST】
ノルマン
吸血鬼の末裔
黒髪美人系で楽しい事は好き。キレたらヤバめ

クロード
前半:ノルマンの想い人、金髪ガチムチ系。ちょっとアツイ修◯タイプ
後半:あっけらかんとした黒髪美少年。ちゃっかり策士

ウェイン
吸血鬼の末裔
幼馴染的存在、感情の起伏が激しい






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