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01
自分は今まで一体、何の為に生きて来たのだろうか?己の為、欲の為、子孫繁栄の為?
否、どれも不適当だ。
『47代国王、アーダルベルト=ルートヴィヒ!』
己はこの国の為に、生まれた時からずっと生きてきた。民無くして国あらず、国王無くして平和あらず、そういう国に育てようと祖父と約束した。
『神を冒涜せしめんと謀り、罪無き民を殺め、国民を謀り』
国の為に、身を粉にして各国を回った。財政を、軍事を、国政を建て直し、条約を交わし他国との戦闘をできる限り回避しようと。
『暴虐の限りを尽くした罪を今ここで裁かん!我ら裁判団は処刑をもって裁きを下さんと意見したが』
先代が信頼を置いていた国内随一の魔術師に、全てを、全権を委任し他国を歴訪した。条約や協定を結び侵略を阻止し、己の決めた己の役目を全てを完遂した頃には、もう既に終わっていたのだ。
『ここに新たな国王として戴冠なされたミッシャ=マクシミリアン殿下の御慈悲により、この者を流刑に処する!この判決に異議のある者はおらんな?』
今となれば、それが己の最大の失敗。不安はあったのだ、この腹の底の見えぬ男が強欲家であることを知っていたから。それを知っていながら、己は不安を無視したのだ。彼がいなければ、条約を結びに国を渡れなかったから。
『では明日、刑を執り行う、これにて閉廷!』
こうして自分は、この国に殺される事になるのだ。
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