彼女に振り回され気味な三ツ谷くん








「三ツ谷く〜ん!酔っ払っちゃったよぉ楽しいよぉ」

 ヘラヘラと笑いながら千鳥足で帰ってきたナマエを玄関で抱き止めながらおかえり、と告げる。ただいま三ツ谷くんと溶けそうな声でオレの首に腕を回しながら抱きついてくるナマエはどう考えても世界一カワイイ。

「楽しかったみたいだな、飲み会」
「うん!久々にみんな集まれてね、すごーく盛り上がっちゃって」
「そっか。でも、」
「遅くなりすぎたよね?ごめんなさい」

 でもちょっと帰り遅すぎじゃね?と言おうとしたオレの言葉を予測したかのように被せて謝罪してきたナマエ。…うん、分かってんならいい。反省してんならいい。甘えてくるその頭を優しく撫でながら、とりあえず無事に帰ってきてくれて良かった、と心の中で安堵する。

「今度こんなに遅くなる時は連絡しろよ?迎えに行くから」
「えー、迎えにって駅とかじゃなくて飲み会にまで来るんでしょ?」
「うん」
「それはヤダなぁ。三ツ谷くん過保護〜」

 ケラケラと笑いながらオレの腕の中から逃げ出し、リビングに進んでいった。…分かってんのかなコイツ。こんな酔っ払ってこんな風に絡んできたら手ェ出してくる男絶っっ対いるってこと。絶対分かってねぇんだよなコイツ。だから駅に迎えに行くくらいじゃヌルい。他の男たちを牽制するって意味も込めて、居酒屋まで迎えに行かなきゃ意味がない。

 楽しそうに鼻歌を歌いながら上着を脱ぎ、洗面所で手を洗うナマエにため息が漏れる。ったく、こっちの気苦労も知らねぇで楽しそうにしてんな…。とりあえずなんか飲ませようと思い、キッチンに行き冷蔵庫から冷たい水を出す。

「ねーねー三ツ谷くん」
「ん?」
「好き」
「…うん」

 冷蔵庫の前に立つオレの背中に抱きつき、好き、だなんて言ってくるナマエに心臓が揺れた。普段は滅多に言わねぇくせに、なんでこう突然甘えながら言ってくるんだ。悔しいけどセックス中でもいつもオレから言って、ナマエは私も、とかしか言わない。だからナマエの口から放たれる「好き」ほどオレにとって貴重なものはない。

「三ツ谷くんにくっつきたーい」
「くっついてんじゃん今」
「もっともっとくっつきたーい」
「はいはい。とりあえず水飲めって」
「ねー三ツ谷くん脱がしてもいい?」

 ナマエのその言葉に驚いて顔を背中側に向けると、ナマエはニコニコ…いやヘラヘラ笑っていた。いくら酒が入ってるからって、ナマエはそんなこと自分から言うような奴じゃねぇだろ…?
 こっちの戸惑いは全く伝わってないのか、ナマエはそのままオレのベルトに手をかけて本当に脱がそうとしてきた。

「おい、ナマエ」
「なぁに〜?」
「お前さ、飲み会でこんな風に男に甘えたりしてねぇよな?」

 ベルトを弄るその細い指を押さえながら聞くと、ナマエはきょとんとした顔をした。

「えー、覚えてない!」
「は?」

 呆れると同時にオレの中で何かがぶちぎれる音がした。…覚えてない?覚えてないってなに?そんなことしたかも覚えてないほど酒飲んだってか?オレという彼氏がいるのに、他の男にもこんな風に接してたかもしれねぇってか?

「ねぇ三ツ谷くんー…って、ぅわ!」
「ナマエ。それは悪い子すぎ」

 気づいたらナマエの体を抱き抱えて、半開きになってた寝室のドアを足で開けて、ベッドの上にちょっと乱暴にナマエを寝かせた。

「え?なになに三ツ谷くんちょっと怖いんだけど」
「怖くなきゃ意味ねーだろ」
「え?怒った?」
「当たり前だろ!むしろなんで怒られねぇと思うんだよ」
「えーうそぉごめん…」
「謝ってももう遅い」
「これ…お仕置きですか?」
「そう、お仕置きです。」

 いつもと違う態度のオレにさすがのナマエも少しビビってくれたのか、乱暴に服を脱がそうとしても大人しくしていた。普段は怖がらせたいとか思わないけど、こういう時ぐらいは少しはオレを怖いと思わせたい。怒らせたらどうなるか、ナマエの体に覚えさせないと。

「ねぇねぇ三ツ谷くん」
「あ?なんだよ?」
「やだ元ヤン怖いって」
「なんか余裕だなお前」
「ううん、そんなことないよ。ね、続きは?」

 明らかにビビってない、むしろどこかウキウキした目でナマエは続きを促してきた。言われるがままに彼女の服を脱がせ体のあちこちに唇を這わす。いつもより無理やりシてる感じはあるのに、ナマエは一向に嫌がってる素振りを見せない。おかしい、絶対おかしい。

「なあ…お前喜んでる?」
「かも?」
「なんだよそれ…」
「怒っていつもより強引な三ツ谷くん、たまには見てみたいじゃん?」

 …は?なにそれ?たまには強引にされたくてこうやって仕向けたってことか…?あのなぁ、とナマエの頬をつねればまたケタケタと笑った。

「こんな三ツ谷くんも、私は好きだよ?」

 ダメだコイツなんなんだまじで。完全にオレ、振り回されてね?





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -