三ツ谷の好きな子はマイキーが好き






「みーつや!おはよっ」
「おー」
「あれ、また喧嘩した?顔にあざ増えてない?」
「んーまぁちょっとな」
「勝ったの?」
「おう」
「マイキー君も参戦したの?」

ほらきた。すぐにマイキーって名前出してきやがる。同じクラスのミョウジは明るくて元気はつらつって感じの女子。意外とこの明るさがいいって男子には人気だけど。でもミョウジの想い人はマイキーだ。オレが東卍に入ってると知ってからマイキーの情報聞き出そうとやたら絡んで来るようになった。


「マイキーもいたよ」
「そうなんだ!相変わらず最強に強かった?」
「まー、うん」
「そっかあ。かっこ良かったんだろうなぁ。見てみたかったなぁ」
「女が見るモンじゃねぇよ」
「喧嘩見たいんじゃなくってマイキー君が相手を一撃でやっつけるとこ見たいの」

パンチの真似をしながらニヒヒと笑うミョウジの顔はキラキラしていた。というか、マイキーの話をしてる時は大体コイツこんな顔。マイキーねぇ…それなりに付き合いは長いけどどんな女がタイプかとか知らねーなぁ。もしかしたらオレが知らないだけで彼女いるかもしれねぇし。

なんて、そんな「かもしれない話」コイツにしたって落ち込むだけだから、しないけど。



「なぁなぁ三ツ谷ってミョウジさんと付き合ってる?」

よく一緒に話すようになってからこんな事を聞かれる事も少なくない。やっぱりアイツは男子から人気がある。

「付き合ってねぇよ」
「まじ?ミョウジさん三ツ谷といるときすげー嬉しそうに笑ってるから、そうなのかと思ってたよ」
「別にアイツいつもニコニコ笑ってんじゃん」
「そうだけどさ、なんか三ツ谷といるときは違うっつーか…」

そりゃな、オレと話してる内容なんて8割がたマイキーの話だから。客観的に見たら恋する乙女の顔をしてるんだろう。付き合ってないなら告ろうかなと言い出したそいつに対し、なんて言葉をかけようか迷った。でも、変に傷つくくらいなら真実を教えてやるべきか。

「やめとけよ。ミョウジ好きな奴いるから」

まるでアイツに他の男が寄り付かせないかのように、オレは言い放った。







「三ツ谷いま帰りー?途中まで一緒に帰ろ」
「おー」
「ねぇーいつになったらマイキー君に会わせてくれるのー?」
「…そんな約束したっけ」
「したじゃんー!その内会わせてやるからって!ずっと待ってるのに…」

最初の頃にした約束、もしたしたらもう忘れてるかなって思ってたけど女の記憶力は相当良いってのは本当らしい。しゅんとするミョウジの顔を見てると良心が痛む。会わせてやれる時なんて今まで何度もあったけど、オレはその度にわざとその時を逃していた。だって、憧れのマイキーを目の前にしたミョウジの姿なんて見たくない。

「今日…これからマイキーんち行くけど」
「えっ!」
「一緒に来る?」
「えぇーお家?いきなり大丈夫かな…」
「たぶん大丈夫。一応聞いておくな」

携帯でマイキーに電話をする。「クラスの女子一人連れてっていい?」と聞けばあっさりと承諾してくれた。「三ツ谷のオンナ?」と聞かれたからそこは否定しておいた。ミョウジは少し背伸びしてオレの携帯に耳を近づけ電話越しのマイキーの声を聞こうとしている。頼むから、まじ、そんなに顔近づけないでほしい。


「三ツ谷、ありがとう…」
「どういたしまして」
「電話越しのマイキーくんの声聞けただけでも感動もんなのに、今からお家に行くとか…、どうしよう。ねぇ私変になってたらフォローしてね!?」
「オマエは平気だろ。コミュ力高いし明るいし。きっとマイキーも気に入るよ」

ミョウジは顔が赤くなった。そして緊張しているのか段々と口数が減ってきた。なんて言葉を掛ければいいのか分からなかった。こんな大人しくしているミョウジを見るのは初めてだったから。おいおい持ち前の明るさはどこ行ったんだよ。そんなんじゃマイキーに気に入ってもらえねぇぞ。

そのまま入って来ていいとメールを貰ってたから、言われたとおりインターホンは押さずにマイキーの部屋に向かった。賑やかな声が聞こえる。もう他の連中も来てるらしい。緊張のあまりか震え出した
ミョウジの肩に手を置くと、びくりと肩を上げた。


「三ツ谷…」
「らしくねぇな。いつもみてぇに笑ってれば大概の男はオマエのこと気にいるだろ」
「な、なにそれ!」
「大丈夫だよ。マイキーも女にはひでぇ事しない。それにオレが隣にいるだろ?」

何でオレは自分で自分の首を絞めるようなこと言ってんだろう。でもオレの言葉でミョウジは笑ってくれた。心底安心したような表情をした。そしていつもみたいに笑って「よしっ」と気合を入れていた。そう、オレが見たかったのはオマエのその顔なんだ。


「マイキー、入るよ」
「初めまして!三ツ谷のクラスメイトのミョウジナマエです。いきなりお邪魔してごめんね、マイキー君」

100点満点の自己紹介。さっきまで緊張しまくって固まってた奴とは思えない程の笑顔で。マイキーも最初は驚いた顔をしたが直ぐに柔らかく笑った。

「いらっしゃい、ナマエちゃん」


ほらな、オマエが笑えば大抵の男は落ちるんだよ。





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