つかの間の休息。
散り散りになった戦士たちが予め定められた集合場所に集まり、ぐるりと焚き火を囲んでみんな一緒に食事をとる。


「今日の当番はシオンか」

「えへへ、フリオニールの腕には適わないけど。よかったら沢山食べて」

「そんなことないぞ。みんないつもシオンの料理を楽しみにしてるんだ」

「うん、本当美味しいよ。シオンはいい奥さんになるね」

「わ、ほんとに?ありがとうセシル。フリオニールも」


今日何があったとか、あそこにはこういった種のイミテーションがいたとか。
各々の戦況報告から何てことのない雑談まで、会話の内容は様々。
半日ぶりに顔を合わせる仲間の姿を見てほっとするのは自分だけではないようで、それぞれが安堵の色をその表情に浮かべていた。一人だって欠けてはならない、大切な大切な仲間だ。


「…あ、」


早速おかわりに押し寄せたティーダとジタンの背中を見送ったとき、視界の端に一人の人物の姿が映った。
一人だけ輪から外れて、岩の前に腰を下ろす彼は、何か考えるような表情を浮かべたまま空を見上げている。


(どうしよう、どうしよう。)


そんな彼と、周りのみんなと鍋の中身とを交互に確認しもぞもぞと体を動かしていたら。闇夜にきらりと透ける銀髪が、隣でふわりと跳ねた。


「いっておいで」

「セシル、」

「みんなのおかわりをよそうのは、僕がやっておくから」

「え…でも」

「シオンが行けば、彼もきっと喜ぶ。いっておいで」

「…ッうん、ありがとうセシル!」


にこにこと笑うセシルにそっと背を押され、スープの入った器を傾げないようゆっくりゆっくり彼の元へと歩を進める。

己に近付く気配に気付いたのか、はたまたいまだ熱々なスープの匂いに誘われたのか。
おそらく前者だけれど、今までずっと空に向けられていた彼の両目が、すうっと私を捉えた。
そのまっすぐな眼差しに、何を言われたわけでもないのに胸の辺りがきゅうっと熱くなる。


「ウォーリアさん。夕食、よかったらどうぞ」

「ああ…すまない」

「なにか考え事、ですか?」

「…いや。星を見ていた」

「星?」

「不思議なものだな。こうして夜空と共に…皆の様子を眺めていると、この世界に争いなどないように思えてくる」


言って、視線はそのまま、わずかに目を細める。その姿はまるで、我が子を見つめる父親のようで。
このような暗闇でも、兜をつけてないせいもあって彼の顔が、表情が瞳が何時もよりしっかりと見て取れた。
少し離れた場所で揺らめく炎のオレンジ色が、二人の頬を薄く照らしている。


「はい。とても穏やかで…温かいです」

「私にとっての光は君たち自身だ。共に在るべき光。護り抜きたいと、強く思う」

「…ウォーリアさん」

「そんな事を考えていたら、ついぼうっとしてしまっていた。私は君を心配させてしまったか」

「いえ…だけどウォーリアさんにはもう少し、ちゃんとゆっくり休んでほしいなって思います」

「…そうか。では、頂くとしよう」

「あ、」

「私の為に、わざわざ持ってきてくれたのだろう?」


目がチカチカしたのは、きっと夜空に浮かぶ星たちのせいだけではない。
顔をこちらに向け、ほんの少しだけ口元を緩めたウォーリアさんは、ありがとう、と言ってもう一度笑ってくれた。

その顔を見るのが、私だけならいいのにと天に願う。その顔を知るのは、星空の下、この世界中で私だけでいい。


あなたが笑うと星が瞬く



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