緩やかに崩壊する世界
夏から秋へと季節が移り変わるこの時期はどんな服を着てきたって後悔している気がする。今日だって一応持ってきた上着を寒くなってきたから羽織ったのに、やっぱり寒い。二人でこうやって歩いているのは大好きなのに、私が寒がっていると風邪引いたら困るから帰ろうとはるくんは言い出す。彼はそういう人。


それでも私はそんなの嫌だから寒くないフリをする。そういえばはるくんはいつも薄着なのに寒そうじゃないよなぁ。今もかなぁ、と隣に居る彼の顔を盗み見ると、にこっと笑われた。なんだか心が読まれた気がして慌てて顔を逸らすと自然に繋がれた彼の右手と私の左手。


あぁ、やっぱり温かい。私も握り返すと彼は目を細めて笑った。そして二人の繋がれた手を彼は上へと向けた。急に手を引っ張られた私はびっくりしてはるくんを見つめたけど、彼は空を見上げて「ねぇ、オーロラ」なんて呟いた。「え?何?」唐突な話に驚いたのと呆れたのと。彼はそんなのしょっちゅうだけどなんか今カップルぽかったのに。それでも見るまで手を下ろしてくれそうに無いので仕方なく見上げる。


「ほんと、だ…」
「わはっ」


すると、そこには本当にオーロラがあった。オーロラなんて写真でしか見たことないけれど、夕日で赤と青と紫に染まった空と雲と、それらが私にはオーロラに見えた。そういえば秋の空は綺麗だって、そういえば小さい頃お母さんが教えてくれた気がする。それでも実感したのは今日で初めて。


「はるくんはいつもこんなに素敵な世界を見てるの?」


今誰よりも近くにいたはずなのに、こんなにも違った景色が見えているなんてなんだかどきどきした。そして怖かった。私の世界とはるくんの世界は、違うのかもしれない。すると繋がれた手が漸く下ろされ、はるくんの視線も私の方へ向いた。のもつかの間、今度は腕を思いっきりはるくんの胸に引き寄せられて私の身体ごと腕の中に納められた。今度は違った意味でどきどきし始めた心臓を嘲るように彼は「今日は、二人だから、だよ」と笑った。


緩やかに崩壊する世界
(緩やかに、美しく、君と)

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素敵企画平均は左右逆の期待様に提出させて頂きました。なんとgk夢企画様です!広まれジャイキリの輪っ!そして窪田の輪っ!(笑)
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