恋は盲目、と唱えた
女なんて飾りでしかない。女がきらきらした装飾品を身につけるように、俺は綺麗な女を連れて歩く。それを承諾して付き合っていたはずなのに、泣き出す女が鬱陶しくて堪らなかった。


そもそもこいつが欲しかったのは赤崎遼、俺なのだろうか。いや、違う。若くてサッカー選手なら誰でも良かったんだ。いつだってそうだ。俺を、俺自信を欲しがるやつなんて、誰もいない。


思い返せば幼稚園の時からそうだった。いじめっ子から守ってくれるから好き。小学校の時は足が早いから好き。中学校の時は背が高いから好き。高校の時はクラスの中心グループにいるから好き。そして今はサッカー選手だから好き。別に全てが面と向かって言われたわけじゃない。それでも分かるんだ。言葉の節々から溢れてくるんだ。


お前は私の株をあげるために隣にいろ、っていう本心が。


それなら俺もそういうために相手を選ぼう、そう思っただけだ。本気で人を好きになるなんて馬鹿らしい。どうせ俺が振った翌日には違う男の上で腰振ってるような女共だ。


付き合ってほしいと言われたからyesと答えた。私のこと好きなの?と聞かれたからnoと答えた。それだけなのに、泣きわめいて遊びだったの?なんて被害者ぶる。じゃあ聞くけどお前はどうだったんだっての。装飾品に反逆されたからムカついたのか?本当に勝手なやつ。


だけど、お前は違うと思った。そうじゃなくても、そうなって欲しい。もう俺はあんな思いしたくない。こんなの頼んで承諾してもらうことじゃないのは分かってる。だけど、どうすれば良いか分からなかったから。散々恋愛ごっこをしていた俺は、本当の恋愛については全く無知だった。


「どうしてそんなこと話したの?」


どうしても聞いて欲しいことがある。突然掛かってきた電話に、重い口調でそう言われた私は別れ話だったらどうしよう、なんて考えたくないことばかりをぐるぐると考えていた。それなのに、遼が吐き出したのは「私が好きすぎて苦しい」という内容のものだった。もちろん単純に嬉しかったけれど、それと一緒に感じた純粋な恐怖。


彼の目は愛しい人を見る目ではなく、まるで獲物を狙うかのようなそれ。


「聞いて欲しかったから」
「私は聞きたくもなかった」
「そう。嫌いになった?」
「なれたら楽なんだけど」
「ならないで」


まるで子供のような口調で「お願い」と何度も繰り返し、抱きついてきた遼は私の知っている遼ではない。これは一体誰なんだろう。私が憧れ、恋い焦がれた我儘で一匹狼な彼は今どこにいるのだろう。もしくは最初からいなかったのだろうか。


格好付けて、こんなに何重も何重も仮面を貼り付けてるから苦しむんだよ。馬鹿だなぁ。小さい子をあやすように背中をゆっくりと撫でると抱き締める手の力が強まったのを感じた。


恋は盲目、と唱えた




110824
ドヤ顔ダーリン!提出
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