寡黙な留学生×流され平凡

寡黙な留学生×流され平凡


※結腸責め
※潮吹き布
※男性妊娠を示唆



”留学生寮のアルバイト大募集! 留学生のルームメイトとなり、家事や勉学のサポートをしませんか? 希望者は以下のメールアドレスに――――……” そのポスターを見た瞬間、僕は一も二もなく応募した。


 外国語は全く話せないが、セクシー金髪美女や異国情緒あふれる褐色レディとお近づきになりたかった。そう、僕には下心しかなかったのだ。潔いほどにすけべな事を期待していた。

 それが悪かったのかもしれない。


「ルース、僕は……僕は……うう、このバイトを辞めたいと思っている……ううっ」
「あ、ハイ……」
「だって男子寮なんて聞いてないもん! だって話が違うもん! うううううううっ」
「そうデすか……」


 僕が男泣きしている横で、ルースは黙々とレポート課題を進めている。
 ずるずると鼻水を垂らして大泣きしていても、その緑がかった瞳を向けてくれることはない。彼は勉強熱心でまじめだが、何を考えているのかが分からない男だ。

「うう、たしかに金髪だけど、褐色だけどぉ……ずびっ、ルースは美女じゃないぃ……」
「ハルマ……やかましイ、です」
「ひどい」


 だが、僕がなんだかんだでバイトを続けている理由は彼にある。
 ルースには頼れる相手がいなさそうだし、慣れない日本での暮らしに苦労しているだろうし、僕がいなくなったら困るかな、なんて恩着せがましい事を思っているのだ。

 乗り掛かった舟とでもいうべきか、このまま寮を去るのは彼を見捨てるみたいで後味が悪い。そんなこんなで、今日も仲良く――僕は仲良く、と思っているが彼がどう思っているかは知らない――勉強会をしている。


「なあ、ルースはどうして留学してきたの? 自分の国の大学じゃだめだったの?」
「……うちの家、みんな留学すル……から」
「へえ」


 僕は彼の勉強の邪魔にならないように、コーヒーでも買いに行こうと立ち上がった。部屋を出ようとした瞬間、いつのまにか僕の腕を掴んでいたルースが、珍しい事に自分から声を発した。

「よめ、さがし……外国でする習わし、だから」
「へ? よめ……って、お嫁さん? ふうん、そういえばルースはいろんな人種の血を引いてるって言ってたな。そういう家系なんだ。じゃあ日本人のお嫁さんを貰うの?」

 彼の新たな一面を知れた。何となくそれがうれしくて、話を広げようと早口で言葉をつなげる。

「見つかったの? お嫁さん候補」
「嫁……す、すきな、子が、できタから……嫁に、する」
「おお……! そうかそうか、がんばれよ」
「ハルマ」

 名前を呼ばれたので、「うん?」と目を合わせる。


「ハルマ、嫁にすル……」


 褐色の肌を真っ赤に染めたルースは、強い力で僕の手を握った。
 



***




 戸惑う僕をじっと見つめ、ルースはぽつぽつと告げる。頭が真っ白であまり理解できなかったが、「婚姻」とか「儀式」とかいう言葉を聞き取れた。

「ま、待ってよルース……僕は男だ。嫁になんてなれないよ」
「知った事ではナイ……」
「お前のその妙な語彙は誰に教わったんだよ」

 シンと静まり返る寮の一室で、僕はぎこちない笑いを零し、「なあ冗談だろう?」と問いかけた。もちろん、彼が冗談を言う男ではない事は承知だ。

 ルースは何も答えず、次第に僕の顔からも笑みが消えていった。ぎゅっと両手を握られると、彼の手が僕の手をすっぽりと包めるほど大きなことに気づく。

「あ、あの……僕は……」
「ハルマ、ちいさい、かわいい……ちいさいのに、私の世話、がんばってくれル……とても、やさしい……守りたい、ハルマ……嫁に、すル」
「え、指輪!? ちょっと、勝手に話を勧めないでくれよ! なんだこれ、外れない……っ」
「儀式、すル……ハルマ、嫁にする、儀式……」


 いつのまにか嵌められていた指輪には、見た事のない文字が掘られていた。きっと彼の母国語だ。
 中心には緑色の宝石が埋め込まれていて、さわると生温かい。ルースがずっと握りしめていたのかもしれない。

「あ、あの、その、ルース……あ……っ
「儀式、成功したら……嫁に、なル。いいな?」
「へ……っ

――――何だよその顔、今まで僕に興味ないみたいな顔してたくせに……急に、強引な雄みたいな、ライオンのボスみたいな顔つきになった……


「う、うん……


 おかしい。僕はセクシー金髪美女や異国情緒あふれる褐色レディに憧れていたはずだったのに。
 気付けば頷いていた。金髪で褐色で異国情緒も(男の)色気も溢れているけれど、でかくてごつくて口下手なくせに強引なルースのプロポーズに屈し、完全にメスの気持ちになってしまった。


「ハルマ、いっぱい孕ませル。いいな?」
「は、はひ……っ

 この時は、まさか彼が某国の王族様だなんて知らなかった。
 僕はぽわわん とした気持ちに流され、彼の太い腕で押し倒されてしまった。



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