グリフィンドールがクィディッチ寮対抗試合に勝利したことで、談話室はお祭り状態だった。部屋の広さからして明らかに許容人数を超えており、諦めて寮に戻り始める生徒も増えていた。 「ねえ、ロン、ジョージは?」 「んん?」 ロンはチキンを口一杯に含んでもぐもぐしながら振り向いた。そばかすと赤毛は、無意識に私の鼓動を速めてしまう。いやいや。この人は弟。弟だから。 「そういえば居ないな? ていうかレナ、すごいな……二人がもう見分けられるのかい?」 「ああ──うん、まあなんとなくだけど」 「僕でも時々間違えるぜ……あ、ジョージの奴酒飲んでたからもしかしたら酔い冷ましに外に行ってるのかも」 「ほんと? あ、ありがとう!」 ロンの言葉を聞いた途端私の体は太った婦人へ動いていた。ロンは「頑張れよ〜」と手を振っている。そう、私の恋心は周知の事実であるのだが(本人の家族にまでも)、本人が気付いてくれないものだから苦労しているのだ。 風に当たれるところ、で思いつくのは天文台くらいだが、ジョージがわざわざ天文台に行くとは思えない。思い切って玄関から外に出て探して見よう。と思って出たら──居た。 「ジョ、ジョージ! 風邪ひく!」 私の思い人は湖の周りの芝生に大の字になって寝ていた。長い脚をほっぽり出して、厚い胸が小さく上下している。ああ、良かった生きてた──って、死んでたりしたら、私もショックで死んじゃうんだけど……。 「ジョージ」 名前を呼んでも彼は起きない。長い睫は月明りで頬に影を作っていて、その上に柔らかそうな赤毛がかかっている。薄く開いた唇からは定期的に呼吸の音がする。 やばい。触りたい。ドキドキしてきた。 「ジョージ……」 さっき随分とお酒を飲んでいたし、きっとそう簡単には起きないだろう。頬にそっと触れてみた。思いのほかすべすべですこし笑ってしまった。 好きだと言ったら、ジョージは何を思うのだろう? きっと困った顔をするんだろうな。これから今迄みたいに、友達としても傍にいられなくなるのかもしれない。 「……」 そんなのは嫌だけど、きっとそれが現実なんだ。目の奥がつんとするのを感じた。ジョージは、こんなに近くにいるのに。 「ジョージ、好き」 彼の規則的な呼吸はそのままだ。 「好き……」 ほぼ無意識に顔を近付けていた。両手を彼の頬に添えて、もうすぐで唇が触れ合う、その瞬間私の頬がジョージの両手で固定された。 「え、え、」 「おはよーレナちゃん」 「────!?」 ばっ、と離れようとした時にはもう遅くて、ジョージの腕は私の背に回り完全に動けなくなっていた。つまり私が覆いかぶさっている状態が続いているわけである。 「い、いつから起きて」 「レナちゃんが俺に熱い視線を送ってる時から」 それって最初からじゃん……! ていうか、酔っているのではなかったのか。ジョージの瞳はぱっちり開いていて、どう見ても完全に覚醒している。おまけに、既にいつもの悪戯な色が浮かんでいる。 ていうか、顔が、近いのよ……! 「目ェ開けてよ」 「だ、だって、近い」 「レナ」 「……」 ジョージの低い声が耳から全身に浸透する。恥ずかしくて閉じていた瞳をそろそろと開いた。そこにあるのは、これ以上ないくらい近いジョージの瞳。ジョージは目を細めて私を見ている。 なんていうかもう、心臓が破裂しそうだ。 「ジョ、ジョー」 「ねえ、俺も」 ジョージの掌が私の頬を撫でた。思わずびく、と反応した私に、ジョージの瞳はまたしても細まった。 「俺もレナちゃんのこと好き」 あ、と私の口が開いた途端、ジョージに噛みつかれて私の口は塞がれた。息が出来なくて苦しくて、だけど私を満たすジョージの匂いが幸せで。私の瞳からは自然と涙が零れた。 あいしていてさまに提出 ありがとうございました! ジョージ大好き! 20121111 |