※ヒロインはトリップしてきて、エレンたちの言語を知らない設定。今は勉強して片言で話せます。(エレンたちも、日本語がわかりません)
→現在は調査兵団に保護されている(地下牢)設定。感覚でテキトーに読んでいただければ!
すっごい長いです。続きます。すみません。


 目が覚めたらまたあの地下牢に居て、両手には手錠が掛かっていた。天井が無機質な石が広がっているだけで電気も無い。……いや、この世界に電気が無いのはこの前わかったはずだ、忘れていた。
 起き上がって、外れるわけがないが、どうにか外れないだろうかと手錠をガチャガチャやっていると、向こうから足音がした。人が来る。
「すまないね、こんなところに閉じ込めて」
「……あ……、」
「久しぶり、レナ」
 やって来たのは、地下街でゴロツキに襲われんとしていた私を見つけてくれたエルヴィン・スミスだった。このエルヴィンさんは、良くわからないが「調査兵団」という団体のトップらしい。言語がわからない所為でよく理解できていない。
 理解できていないので、エルヴィンさんは私を此処に幽閉する理由を説明してくれたたずだが、私は正直まったくわかっていなかった。彼は難しい言葉(発音も、意味も)を能く使う。
「若い女の子を地下牢に追いやるのは私も気が進まないのだがね……」
「……あ、エ……、エルヴィン?」
「ん?」
 彼は私がこの世界の言語を習得仕切っていないことを承知しているので、たどたどしい口調や、敬語が使えていないことについては言及してこない。器の広い人間である。
「私……大丈夫、だから、捨てて、……? 平気……です」
「レナ……」
 エルヴィンさんは捨てられた子犬を見るような目で私を見た。そして太い柵の隙間から手を突っ込み、乗り出していた私の頭を優しく撫でた。うわ、なんだこれ泣きそうだ。危機的状況で人に優しくされると、どうも弱い。
 とにかく私は、これ以上この出来た人間エルヴィンさんを困らせたくなかった。私を見つけ連れて帰り、保護しようとしてくれた彼だが、勿論周囲の人間には激しく反対された。彼らの最大限の譲歩が、手錠繋ぎで地下牢に監禁……という現在の状況である。この世界の言語を理解しない私は、「調査兵団」の彼らにしたらまさしく得体の知れないもので、人間として扱われなかった。どうやらここには、一つの言語しか存在しないらしい。それを知らない者は確かに、この世界では「人間ではない」ということになるだろう。
 全面的に私の存在を庇おうとしてくれるエルヴィンさんは、当然ながら非難を浴びた。これ以上此処にとどまり続けることは、彼に迷惑を掛けてしまうことになる。
「レナ、大丈夫だ。此処から君を追い出したりはしない」
「でも、……エルヴィン、が、」
「私のことは気にするな。君は行くところが無いだろう? ……今日は君に仕事を持ってきた」
「え……」
 仕事。彼はそう言った。言語を理解していない今の私に出来ることがあるとは思えない。いや……例えば慰安婦のようなことなら? 戦争中も兵士には女が宛がわれたという。彼らは、ストレス解消に抱く女が言葉を話せなくても気にしないだろう。考えるとぞっとした。
「いや……安心してくれ。君にそんなことをさせるわけがないだろう……」
「あ、ごめん、なさい、」
 私の絶望した表情でエルヴィンさんは色々察したらしい。さっきから頭に載せられたままの彼の大きな手が、私の髪を梳いた。男の人にこういうことをされるのは慣れていないので照れる。さすが外国人(というか異世界人……?)は行動が日本人の男とは違う……。
「そうだな……あと少ししたら、隣にもう一人来る」
 そう言いながら、彼は親指で私から見て左側を示した。囚人が増えるらしい。
「恐らく君と同じくらいの年齢だろうな。理解しがたいだろうが……巨人に成れる少年が来るんだ」
「え、きょ、……きょじん、? きょじん、」
「そうだ。前にも説明したとおり私たちが戦うべき敵だ。しかし彼は巨人に成れる。だから危険人物として此処に監禁される」
「きけんじんぶつ……」
 きっと私の発音が正しくなかったのだろう、エルヴィンさんは真剣な話題だったにも係らずぷっと吹き出した。
「エ、エル、ヴィン!」
「ああすまない……”危険人物”だよ」
「危険人物」
「そうだ、あってる」
「危険人物……その、男、が」
「ああ」
 私と同じくらいの歳の男の子が、地下牢に監禁されるなんて。その少年は、そこまでの何か重大な罪を犯したのだろうか。
「レナ、君には彼の相手をしてもらいたい」
 理解できずに、一瞬固まった。
 相手。相手、って、……結局、あの、相手ということだろうか。
「話し相手になるだとか、食事を運んだりとか、そういうことだ」
 安心した。
「あぁ……そんなっこと、なら、私、やる。なんでも……やる、ます」
「やります、な」
「……なんでもやり、ます」
「レナ、ありがとう」
 エルヴィンさんは微笑んで、私の頭を撫でた。この人はまるでお父さんのようだ。
「彼の名前は、エレン・イェーガーという。成績優秀な訓練兵だった」
「くんれんへい、……」
「エレンは憔悴している。……労ってやってほしい」
「はい、エルヴィン、」
 私は頭にあるエルヴィンさんの手を自分の口許に持ってきて、軽く口付けをした。この世界のことが何もわからない私は、エルヴィンさんに服従の態度を示すために、この行動を選んだのだった。
 初めて此れをしたときエルヴィンさんは驚いていたが、真意は伝わったようで今と同じように微笑んでくれた。
「君のことは、必ず私が守ろう」





手の甲にチューしてくるヒロインが可愛くて守りたくなっちゃった父親エルヴィン団長。次からエレンくん出ます。すいません。続きます。

2013-08-09