※主人公はルルーシュの双子妹設定

 それはそれは暑い夏の昼だった。
 クラブハウスの窓は開け放たれ、クーラーの電源は切られている。普段は美しい緑の髪をした少女によって必要以上に冷やされているが、現在は数分留まるだけで沸騰しそうなほどの温度と湿度だった。
「──C.C.、どうしたの? いつもならクーラーをつけてるわ」
 艶やかな黒髪の少女が扉から緑の少女に声を掛けた。
 C.C.は細い肢体をこの部屋の主──ルルーシュのベッドに無造作に投げ出したまま答えた。その顔にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「お前の兄がクーラーのコードを切断した。全くお前らは本当に血が繋がっているのか? あいつは鬼だ」
「まあ、ルルーシュったら、ひどいわ」
「酷いだろう? いくら私だってそんなに丈夫に出来ていないさ」
「そうよね、ごめんなさい。暑いでしょう」
 少女は、ふふ、と笑みを浮かべながらベッドに腰掛けた。長い髪がさらりと滑り、C.C.の顔に掛かった。ふわりとC.C.の鼻腔をくすぐった香りは、彼女の兄と同じものだった。当たり前だ、彼らは同じ風呂場を利用しているため使うシャンプーも同じだ。
「お前はルルーシュと違って可愛げがあるな」
「そう?」
「そうだ──全く同じ顔をしていてもな」
 C.C.の手が下から伸ばされ、少女の頬に触れた。紫の瞳が一瞬揺れたが、C.C.がそれを気に掛けることはなかった。
「C.C.?」
 C.C.は答えなかった。その代わり彼女の頬を優しく撫で、顔を見つめた。
 当然のことだ、彼らは双子だ。しかし彼女の顔を見る度に、ルルーシュと全く同じ顔貌に動揺していた。だからだ。つい──この美しい少女を苛めたくなるのは。
「なあ、ルルーシュはお前にギアスを使ったぞ」
「──え──」
「泣いて反対したんだ、枢木スザクが取り押さえなければお前がルルーシュを殴り殺していたかもしれないな」
 少女の瞳が大きく見開かれた。
 信じられない──どころか、C.C.の言葉を理解ことさえ出来ていないようだった。
 C.C.は自然と自らの顔がふっと緩むのを感じた。
「非人道的な命令ではなかったよ。ただ”俺の作戦に賛成しろ”、それだけだ」
 少女は理解出来ていなかった。一体、自分が泣いて反対するほどの作戦とは何なのか、それに、C.C.のこの泣きそうな表情は、一体なんなのか?
「C.C.」
 ぽた、とC.C.の頬に透明な滴が落ちた。
「うん、そうだ──私も同じだ」
 C.C.は微笑んだ。涙の溜まった大きな紫の瞳を見つめながら、小さく呟いた。
「私もあいつに死んで欲しくはないさ」
 そうしてC.C.は少女に口付けた。




連れ去るさまに提出
素敵な企画をありがとうございました!

20121125