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気付いた時にはお昼から2時間経っていて、既に涙は止まっていた。
とりあえず私はロッカーにある私物をごそごそとまとめて 授業が終わったのを見計らい、それと共に部室を出た。
先ほどの授業で今日の授業は最後だったはずなので 私は職員室に向かい静かに誰にも言わずに顧問に退部届けを出して学校から帰った。
桜井さんにあんなことしておいて幸村くんの言葉を無視してまで部活を続ける度胸は私には無かったんだ。
弦一郎がただただ好きだった頃の私なら、幸村くんに言われても辞めなかったかもしれない。
けれど私は桜井さんを傷つけて、丸井や仁王を巻き込んだ。
その時は良かった。
でも、今考えたら…。
弦一郎に会えないだけでなく部活に出れないのがこんなに苦しいなんて
…知らなかった。
日が暮れてから、チカチカと携帯が光り音楽なる。 "着信:丸井 ブン太"の文字がハッキリ見えた。
何も言わずに部活に出ずに帰ったからだろう。
出る気にはなれなかったが丸井には世話になったし、一応恋人なので辞めた事を伝える為に通話ボタンを押した。
「はい。」 「名字!何で先に帰ってンだよ? つーか退部って何だよぃ?!」
出てすぐに怒鳴られるように質問された。 予想通りの内容に微笑んだ。
「あ、うん。ごめんね? ちょっと色々あってさ。」 「色々って?」
なんで偽物の彼女に こんなに時間を割いて、心配するんだろう。
もはやマネージャーですらない私に。
「色々は色々だよ。 それよりさ、マネージャーも辞めた私にもう付き合って彼氏のふりしなくて良いよ?」
丸井から言いにくいだろうから私から終わりを告げなければ。
それなのに丸井は心外だとばかりに声を荒げた。 「はあ?! 本気で言ってンのかよぃ? 俺はそんな柔な気持ちで彼氏のふりなんかしねぇ! お前が気になったから、わざわざ他の女切ってコクったんだろぃ!」
まくし立てる彼は止まる事を知らない。
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