長編 | ナノ

41


「名字さん、お昼時間あるかな?」
朝練が終わってから幸村くんにそう訊ねられ、大丈夫だと返した。


その場には誰もいなくて
私達は誰にも言わずにお昼休みに部室で会う約束をした。











(さっそく来ちゃったか…。)














予想していたがまさかこんなに早いとは…。

お昼になりクラスをひっそり抜け出して部室で幸村くんを待った。



確実に部活の話ではなく桜井さんについての話だと思う。


しばらくしてから部室のドアが開かれた。




開けたのは無論、幸村くん。








「待たせて悪いね。」
「大丈夫だよ。」

幸村くんは私が座っている向かいに腰をおろした。



こちらに鋭い目を向けて口を開いた。
「…さっそくだけど単刀直入に言う。」

ごくり、と喉を鳴らして続きを待った。











幸村くんはしっかりと私を見据えた。


「渚に対する嫌がらせとマネージャーを今すぐ辞めるんだ。」




















頭が真っ白になって思考が働かない。
「…え……?」
やっとの思いで出した声は小さく掠れた声になった。

「名字さん、君の行為は迷惑なんだ。
渚に対する嫌がらせも君がやらせてるんだろう?






…見損なったよ。」

「…ち、ちがっ…!」
"私じゃない!"と続けられなかった。












違わない。










だって、わかってて見ないふりをしたのは誰でもない私。

丸井の行為に甘えたのは…

















―――――私。











「そんな行為をする子をマネージャーとして、置けない。俺は絶対に置きたくない。
それが例え三年間の実績のある君でもね。

話しはそれだけ。
退部届けは明日にでも出してくれ。じゃあ。」


幸村くんの話は予想以上に淡々としていて冷たかった。


その言葉一つ一つに私が放心してる間に幸村くんは部室を後にした。



















(部活を…マネージャーを…辞め、る?)
気付いた時には瞳から涙が流れた。








でも拭う気にもなれず、微動だにせずに

ただただ…涙を流し続けた。


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