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「お前さんら、サボりに時間かけ過ぎじゃろ。」
「…仁王…。」 「プリッ。」
緊迫した静寂は どからともなく現れた仁王によって破られた。
仁王は不敵な笑みを浮かべて幸村くんの肩に手をおいた。
「試合は残すところ幸村・赤也ペアんとこだけ、なんじゃがな。」
「…あぁ、すまない。 渚、行こうか。」
仁王に微笑んで返し、桜井さんを引っ張ってコートへと戻った。
「ほれ、お前さんらも行きんしゃい」 「あっ…はい!」
仁王がすぅっと目を細め冷めた視線を女の子たちに送ると 三人は慌てて校舎の方へと走り去った。
残ったのは私と丸井と仁王。
遠くにいた私は丸井に近づき肩を叩いた。
「丸井。 なんか、ありがとう。」
「いや、気にすんなよぃ。」
冷めた目をしていた丸井はニカッといつもの笑顔になっていた。
そんな丸井を見て安堵した。
先ほどの、幸村くんと対峙した時の丸井を纏う雰囲気に少し不安を感じていた。
「つうか仁王。 良くここが分かったな?」 「まあな。」
私には読めない仁王で不安だが丸井は信頼しているらしくニカッと笑って、仁王もそれに応えるように微笑んだ。
「しっかし危なかったな〜、さすが我らが部長だよな!」 「あぁ、幸村に嘘は通用せん。 おまけに幸村は渚にホレちょるけぇ…対峙する時は注意ナリ。」
二人はいたずらっ子のような表情で会話していた。
そういえば自分から仁王には本当の事を話したっけ。
あれ?でも丸井にはその事を話してないはず…
疑問符が頭にいっぱい浮かんで放心状態の私に丸井が視線を向けて来た。
「仁王には事情話して協力して貰ったんだよぃ。 その方が何かと助かるし、さ。」 「任せんさい。 お前さんらの為ならコート以外でも詐欺師になっちゃるぜよ。」
ニヤリとニヒルに笑う二人。
彼女には皇帝と神の子がついていて
私にはどうやら頼もしき天才と詐欺師の彼らがついてるみたい。
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