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仁王から視線を外した丸井が私に近付いて顔をのぞいた。
「…名字、今日も送る。
体調どんな感じ?」 「ありがと。 だいぶマシになって今は特に異常ないよ。」
心配そうに顔を歪める丸井になぜか罪悪感みたいなものを感じていた。
とりあえず苦笑いを作って嘘を並べた。
だって体調なんか最初から悪くない。
「そっか。 でも油断はすんなよぃ?
じゃ、真田。名字はきっちり送るから安心しろよな。」 「うむ。 名前が付き合ったのがお前で良かった。 後は任せたぞ。桜井、帰るぞ。」
にかっと眩しい笑顔を私に向けてから振り返って弦一郎に宣言、していた。
弦一郎も色んな意味で心から安心しているのだろう、珍しく微笑みを浮かべて桜井さんと帰って行った。
二人のやりとりは悲しい気持ちになったし、やるせなかった。
弦一郎が私に気持ちがないのが凄く、分かるから…。
でも、最後のあの微笑みを見れただけで
悲しい気持ちは端においやられて幸せな気持ちに変わった。
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