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「名字さん、少し…時間あるかしら?」
放課後、日直だった私は皆より少し遅れて部活に向かう時だった。
少しパーマと明るみのかかった肩までの長さの髪と、ふんわり香るバラの香り。
そして桜井さんに劣らない美貌をした容姿。
行く手を遮ったのはそんな特徴を持つ丸井のファンクラブの副会長であり、丸井と一番古くから多数の体の関係を持つ女性だった。
確か、幸村くんと同じクラスの宮本 静。
「えっと、宮本さんでしたっけ? 部活があるからあまり長くは無理ですけど…。」
宮本さんの凛とした微笑えみと今までの経験からして断るという選択肢は出来なかった。
「大丈夫よ、少し確認したいだけなので。 丸井くんとあなたが付き合っていると言うのは桜井さんが関連しているのよね? なら…、桜井さんからあなたに危害がなくなれば付き合う事は当然止めるのよね?」
真剣な眼差しで私は捉えられた。
瞬時に反応出来なかった。
私達が付き合う話には桜井さんは全く関係ない。
けれど、私にはここでそんな事は言えるはずもなく…
「えぇ、だって側で桜井さんと私を接しさせない為のフリですから。 桜井さんから危害がなくなれば付き合う意味はないです。 私、げ…真田くんが好きなので。」
嘘、桜井さんは関係ない。
真実、好きな人。
半分の嘘と半分の真実。
真実の付き合う意味は何か分からない。 ただ、丸井からの言葉に断れない。
「そう、真田くん…。 今真田くんに桜井さんべったりだもね。 あの子って本当に最低だわ、なんて子なのかしら。 あぁ、真田くんが好きだと言う事は私の中で伏せておきますね。 では、失礼します。」
ぼそぼそと呟いて ハッとしたようににっこり微笑んだ後に私の返事を待たずに去っていった。
多分、彼女は私への嫌がらせに参加した事がないと思う。
なんか、直感だけど きっとそうだと思う。
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