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部活が終わって落ち着いた頃を見計らい、丸井はレギュラーと桜井さんがいる場で嬉しそうに付き合った事を報告した。
私は隅で恥ずかしいやらの感情の為、俯きながら話を聞いていた。
レギュラーの皆はただひたすらに驚いて丸井に質問責めしていた。
桜井さんはにこにこと、おめでとうございます。と祝福してきた。
少し、イラッとした。
弦一郎が近付いて来てたことに気付いて私からも歩み寄った。
「何故言わん。」 「昨日の帰り道からだから、言う暇無かったんだよ。」
「そうか…。 付き合うのは構わんが、部活に支障は出すな。 それから、何かあれば頼れ。」
それだけ言うと私の言葉を待たずにスタスタと部室から出ていった。
"何かあれば頼れ"
その一言がぐるぐると頭をまわって、嬉しさが込み上げて来た。
丸井、ごめんなさい。 でもやっぱり私、弦一郎の事が凄く好きなの。
「名字、そろそろ教室行こうぜぃ!」 「きょ、教室?」
丸井の声に顔を上げれば、皆が部室から出ていく姿が見えた。 どうやら質問タイムは終わったらしい。
丸井の言葉から一緒に行こうとしてる意図が読めた。 が、私からしたらそれはあまりよろしくない行為だ。
今の時間はまさに登校する生徒が溢れている。
「無理無理無理無理!! 今丸井と行ったらファンに何を言われるか分かったもんじゃないっ。」
全力で拒否させていただいた。 手を左右に振って、それはもう全力で。
「だーかーらー、お前に危害は加えさせねぇよぃ! なんで分かんねぇかなー…。」
右手で頭をくしゃりと掴んで歪んだ顔をした。
イライラしているのが分かるが 私からすれば丸井こそわかっていないと思う。
「丸井は知らないんだよ。 女の子って嫉妬したら、それはもう恐ろしいんだから。」
私も、桜井さんに嫉妬してるし良く分かる。
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