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「名前〜? 丸井君って言う男の子が迎えに来てるわよ!」
そんな母の一言で食事中の私は朝から沈んだ気分になった。 玄関に迎えば確かにそれは丸井本人で、母が "彼氏?""カッコイイじゃない" とか後ろで言っていたのを無視して丸井と共に学校へ向かった。
…結局昨日は軽くあしらって終わったはずだったのだけど何故丸井がうちに来たのか不明だ。
疑問を本人にぶつければきょとん、とした顔で
「だって付き合うっつったらこれだろぃ?」
と、さらっと言ってくれた。
私が昨日流した話は丸井の中で何故か肯定になっていたらしい。
「はあ…。」 「んだよ、ため息ついて。」 誰のせいだと思ってるんだ、と言う意を兼ねて丸井を睨む。
「ん?なんだよぃ? あ、やっぱ最低限レギュラーのやつには話した方が良いよな?」
にこにこした表情で話を進める丸井に私は何故か反論出来なかった。
学校近くになって 私は切に嫌がらせが終わって良かったと思った。
だって良く良く思えば、続いていたら丸井がいたんのでは部活前にロッカーを片付ける事は出来ないから誰かしらに気付かれたかも知れないから。
そういえば桜井さんのロッカー、どうなのだろうか?
弦一郎と登校すなら隠しようがないと思うけど。
それは逆に丸井がいるからロッカーの確認が出来ないから残念かも。
「何考えてんだよ?」 「ぅえ?!」
三年間、いつも一人での登校だったから考え込むくせがあるみたいで 丸井が隣にいる事をすっかり忘れていたものだからいきなり声をかけられて驚いた。
「俺が隣にいたら普通は上の空って事はないんだけどな…」
っかしーなあ、とか呟いて怪訝な表情を浮かべた。 そりゃあ熱烈な丸井ファンなら上の空なんてもってのほかだと思うけど… あいにく私はファンじゃないし。
「ま、いっか。」
単純な彼は自分の中で面倒だと思い考えるのを止めたらしい。
本当に単純。
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